
冬の間に栄養を蓄えた新芽が一斉に芽吹く春、4月~5月は新茶が出回る時期です。新茶はさわやかな香りと味わいが楽しめるお茶なので、この時期は緑茶を取り入れる良いきっかけになります。
歴史・由来
緑茶の発祥地は中国です。紀元前2700年頃、薬用として飲まれていたのが始まりとされています。日本における緑茶の歴史は古く、平安時代に遣唐使が唐から持ち帰ったことが由来とされています。当時は大変貴重な薬として重宝され、室町時代以降は茶の湯の発達により、武士や商人にも広がりました。その後、日本での栽培も盛んになり、庶民の飲み物として親しまれるようになった緑茶は、江戸末期より本格的に輸出されるようになりました。
旬
地域により収穫時期は異なりますが、主に4月~5月上旬頃に生育した新芽を摘み採った茶葉のことを「新茶」と呼びます。鹿児島などの温暖な地域から摘み採りが始まり、桜前線と同様に徐々に北上していきます。立春(2月3日頃)から数えて88日目にあたる八十八夜に摘まれる茶葉は縁起がいいと言われ、「不老長寿の縁起物」として親しまれています。現在の暦によると5月2日頃にあたります。
一番茶、二番茶、三番茶とは
「一番茶」とは、その年に最初に摘み採られる茶葉で、「新茶」と基本的に同じものを指します。一番茶は、旨みや甘みの成分であるテアニンが多く含まれており、カテキンやカフェインは比較的少ないため、まろやかで苦味が少ないのが特徴です。一方、二番茶・三番茶は初夏から夏にかけて摘み採られる茶葉で、一番茶と比べてカテキンやカフェインが多く、苦味が強いのが特徴です。

緑茶の種類
煎茶
もっとも一般的な緑茶で、旨味と渋みのバランスが良く、淹れる際は、70~80℃が適温とされます。太陽の光をたっぷり浴びせる「露天栽培」で育てられ、葉に日光をあてることで、健康維持に役立つ渋み成分「カテキン」が増え、爽やかな香りと程よい渋みが生まれます。食事に合わせやすく、カテキンやビタミンCを日常的に取り入れやすいのが特徴です。
玉露
緑茶の中でも高級茶と呼ばれる「玉露」は、旨味成分であるテアニンが凝縮されたお茶です。特徴は、新芽が出始めてから収穫までの約20日間、日光を遮る「被覆(ひふく)栽培」という特別な方法で育てられます。これにより、渋み成分であるカテキンの生成を抑え、代わりにリラックスに関与するテアニンを茶葉の中に蓄えます。50~60℃の少し低めの温度でゆっくりと淹れることで、苦みを抑え、濃厚な旨味を楽しめるのが玉露ならではの特徴です。
ほうじ茶
煎茶などを強火で焙煎し、香ばしさを引き出したお茶です。焙煎の過程でカフェインが減るため、胃腸への刺激が少なく、お子様や就寝前、食後のリラックスタイムにも取り入れやすいのが特徴です。淹れる際は90〜100℃の熱湯で一気に淹れると、香ばしい香りがより引き立ちます。
抹茶
粉末状にした茶葉をそのまま摂取するお茶です。カテキンなどの成分を含み、茶葉の成分を丸ごと取り入れられるのが特徴です。飲用だけでなく、料理や菓子にも利用されています。玉露と同じように日光を遮って育てた茶葉を、蒸して乾燥させた後、石臼などで粉末状にしたものです。お湯に溶かして飲むため、お茶の成分を「丸ごと」摂取でき、カテキンなどの有用成分を余すことなく取り入れられることが特徴です。抹茶をたてる際の最適温度は70~80℃が適温とされ、旨味と香りが最大限に引き立ちます。
緑茶の健康効果
緑茶は古くから私たちの生活に深く根付いている飲み物ですが、近年の健康意識の高まりとともに海外からも緑茶が注目されています。緑茶は私たちの体にどのようなプラスの影響をもたらすのか、緑茶がもつ多角的な健康効果について様々な研究結果が報告されています。例えば、血中コレステロールや体脂肪の低下、抗酸化作用による心筋梗塞や脳梗塞等の予防など、さまざまな研究結果のデータがあります。近年では、リラックス効果をもたらすテアニンの需要性も高まっており、数多くの有益な結果が報告されています。そうした数ある研究の中でも、特に注目すべきは「死亡リスク」との関連です。国立がん研究センターの調査データによると、緑茶を1日5杯以上飲む方は、飲まない方に比べて男性で13%、女性では17%死亡リスクが低いという結果が出ています。

また、緑茶を飲む頻度が高いほど、脳出血や脳梗塞などの「循環器疾患」の発症リスクが低減するデータが得られました。1日4杯以上緑茶を飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて、循環器疾患全体のリスクが16%、脳卒中が20%、さらに脳出血にいたっては約35%も低下するという結果が出ています。これらのデータから、私たちの緑茶を飲む食事習慣、あるいは緑茶からとれる成分が健康に役立つことが期待されます。

緑茶の健康成分
緑茶には、味や働きに関わるさまざまな成分が含まれています。生活習慣病予防に役立つ渋み・苦み成分である「カテキン」、気分をシャキッとさせ、集中力を高める苦み成分である「カフェイン」、脳をリラックスさせ、心地よい休息をサポートする旨み成分である「テアニン」、これらの成分がバランスよく含まれていることが、緑茶ならではの特徴です。

カテキン
カテキンは生活習慣病予防に役立つ成分であることが示唆されています。カテキンには、抗酸化作用や血糖値への影響など多様な働きが期待されていますが、その中でも国が科学的根拠を審査し、「特定保健用食品(トクホ)」として表示を許可している具体的な内容は以下の通りです。

①「脂肪の吸収を抑える」
食事の脂肪の吸収を抑え、排出を増加させることで、体に脂肪をつきにくくします。
②「コレステロールの吸収を抑える」
食事のコレステロールの吸収を穏やかにし、悪玉(LDL)コレステロールを低下させます。
③「脂肪を代謝する力を高める」
茶カテキンを豊富に含み、脂肪の分解・消費を促進することで、体脂肪を減らすのを助けます。
このように、科学的な裏付けがあるからこそ、日常の飲み物として緑茶を取り入れることは、生活習慣病を予防したい方にとって心強い味方になります。
テアニン
テアニンはお茶の旨味成分であり、その含有量が多いものほど、深く凝縮された旨味を味わうことができます。日光を遮る「被覆栽培(ひふくさいばい)」で育った茶葉は、テアニンが分解されずに蓄えられるため、玉露や抹茶に豊富に含まれるのが特徴です。また、テアニンにはリラックス状態を示す脳内のα波を増やす働きがあると言われ、ストレスの軽減や睡眠の質をサポートする機能性成分として、現代社会で非常に注目されています。
ペットボトルで手軽に
急須で淹れる緑茶は、茶葉本来の香りと栄養を最も新鮮な状態で味わえる理想の形です。特に、旨味成分であるテアニンの含有量が多いことや、豊かな香りがもたらすリラックス効果は、急須ならではの大きな魅力です。一方で、私たちの日常的に取り入れやすいのは「ペットボトル」です。市販のペットボトルの緑茶には、高カテキン配合のものや、急須のお茶を意識して作られた旨味成分を凝縮したものなど様々な用途で選べるメリットがあります。手軽に取り入れやすいこと、好みの味を選べることもペットボトルの緑茶の大きな魅力です。
日頃の健康維持には、手軽に成分を補給できるペットボトルを活用し、休日など心身をリラックスしたい時は急須で緑茶を味わう。そのように目的やシーンに合わせて緑茶を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
飲み方の注意点
カフェイン摂取について
日本食品標準成分表(八訂)によると、煎茶(浸出液)には、100gあたり20mgのカフェイン量が含有しております。カフェインには、過剰に摂取すると、自律神経の乱れによる不眠、吐き気、めまいなどを引き起こす作用があると言われています。しかし、これらの症状の現れ方は、個人差が非常に大きいため、日本においても国際的にも適正量は設定されていませんが、米国食品医薬局(FDA)では、健康な成人の目安として「1日400mgまで」という基準が示されていますので、こちらを目安にするのも一案です。緑茶には多くの健康メリットがありますが、カフェイン摂取による影響を受けやすい方は量にも配慮しながら、適切な量を楽しみましょう。
保存方法
お茶の変質・品質低下の原因には、大きく分けて湿度・酸素・光・高温・移り香の5つがあげられます。なるべく少量単位で購入し、2週間から1か月程度で使い切るようにしましょう。品質劣化を防ぐために以下のような最適な保存をすることが大切です。
①未開封の場合、そのまま冷蔵庫(もしくは冷凍庫)で保存する
ただし、冷蔵庫から出した茶は常温にもどしてから使用するよう注意しましょう。いきなり開封すると、温度差で発生した水滴を吸収するため、茶の鮮度を損ねます。
②開封後は、密封性と遮光性のある容器を移し、冷暗所に保存する
なお、冷蔵庫での保存は冷蔵庫内のにおいを茶葉が吸収し、出し入れの際に湿気を帯びる原因になるため、なるべく避けましょう。
おすすめレシピ
ペットボトルのお茶を使ったとても簡単に作れるお茶漬けです。鯛と緑茶の異なる旨味成分を合わせることで相乗効果で旨味が数倍強く感じられ、とても美味しく仕上がります。また、緑茶の成分「カテキン」には消臭効果もあるため、魚の生臭さを消し、後味をすっきりさせます。
簡単に作れる鯛茶漬け
【材料(1人分)】
・鯛の刺身 3~5切れ
・ご飯 130~150g
・ペットボトルの緑茶 150~200ml
〇漬けダレ(合わせておく)
・濃口醤油 小さじ1/2強~小さじ1弱
・みりん 小さじ1/2強~小さじ1弱
・すりごま 小さじ1/2強~小さじ1弱
〇お好みのトッピング
わさび、刻み海苔、大葉、刻みねぎ、しょうが
【作り方】
1.漬けダレに鯛を入れ、冷蔵庫で5~10分ほど置きます。
2.茶碗にご飯を盛り、中央に①の鯛を重ならないように並べ、お好みのトッピングをバランスよく盛り付けます。
3.ペットボトルの緑茶を耐熱容器に入れ、(500W1分40秒)電子レンジで加熱し、鯛の身に直接当てるように注ぎ、完成です。
【アレンジ】
・お刺身の代わりに鯖缶やツナ缶を使うと、漬け込みの手間が省け、よりスピーディーに仕上がります。
・香ばしさを出したい場合は「ほうじ茶」もおすすめです。
・ティーパック緑茶(パッケージに書かれている適温・浸出時間で淹れる)や、冷たい緑茶でも美味しくいただけます。


