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栄養コラム

アジ

No.257

2025年4月25日

管理栄養士 豊泉友加里

フライや干物、お寿司のネタなど、日本人になじみが深いアジ。
年間を通じて手に入りやすく、価格も比較的手頃なうえにクセが少なく食べやすいため、普段の食事に取り入れやすい魚です。また、生活習慣予防効果の高いDHAやEPAや、様々な栄養素が
バランスよく含まれていますので、積極的に食べたい食材の一つです。

アジについて

アジは一年を通して獲れる身近な魚ですが、春から夏にかけてたくさん出回り、その時期に脂がのって美味しくなるため、5月から8月頃が旬とされています。

古くから日本人に親しまれてきた魚であり、日本書紀や万葉集といった古代の文献にもその存在が記され、昔から日本の食文化に根付いていたことがわかります。干物や塩干しなどに加工して保存が効くため、江戸時代には庶民の食生活にも広く取り入れていたと考えられています。

アジの名前の由来

アジは漢字で書くと「鯵」、魚へんに「参」と書きます。
諸説ありますが、参は数字の3を示しており、旧暦3月ごろ(現在の暦の5月前後)に、脂がのっておいしくなることから、この字があてられたといわれます。
このほか、「参」には「多くのものが入り交じる」という意味があり、アジは群集する魚であることが由来の説や、美味しくて参ってしまうから「参」があてられたという説もあります。

アジの種類

アジには、大きく分けて「マアジ」「ムロアジ」「シマアジ」の3種類があります。

「マアジ」
アジの中でも、日本の食卓でおなじみなのがマアジです。体長は20~30cmほどで、北海道から沖縄まで、日本全国で獲ることができます。スーパーの鮮魚売り場に並ぶパックの品名に「アジ」と書かれていたら、ほぼマアジを指すと考えていいでしょう。
※同じ「マアジ」でも回遊するかしないかで見た目や食味が異なります 
○回遊しない瀬付きアジ
 日本沿岸の内湾に居ついているアジで、主に山口県の萩や仙崎、下関で水揚げされています。
 見た目がやや黄色っぽく、身が厚めで脂がよく乗っています。
○回遊する外洋アジ
 外洋を回遊しているため、身は筋肉質で引き締まり、さっぱりとした味わいです。
 また、見た目は少し黒っぽいという特徴があります。 

「ムロアジ」
体長は30cm前後でマアジよりも胴体に丸みがあり、ラグビーボールを細長くしたような紡錘形が特徴です。本州ではあまり獲れず、九州地方や四国地方で獲れ、産地周辺では鮮魚で出回るものの、大半は削り節や干物、練り物の材料とされています。

「シマアジ」
アジの中では大き目で、体長は40~50cmになります。体の真ん中に金色の線が入っています。「アジ界の王様」と呼ばれている高級魚で、特に刺身で食べたときの脂が美味しいとされています。


栄養的特長

同じ青魚のサンマやサバと比べても脂質が少なく、低カロリーなのが特徴です。

高たんぱく質、低脂質 

たんぱく質は、筋肉や内臓、ホルモンなどを作るために欠かせない栄養素です。
アジには、良質なたんぱく質が豊富に含まれています。「良質なたんぱく質」とは、体の中で作ることができない“必須アミノ酸”がバランスよく含まれているたんぱく質のことをいい、体の中で効率よく使われます。
たんぱく質は毎食摂りたい栄養素ですが、特に意識して摂りたいタイミングは運動後です。
運動で筋肉に負荷がかかると筋繊維がダメージを受けます。その補修に良質なたんぱく質が必要なため、高たんぱくで必須アミノ酸をバランスよく含むアジはおすすめです。

他のたんぱく質食品と比較しても、脂質量がほぼ同じ木綿豆腐と比べると、たんぱく質は約3倍も含まれ、また、たんぱく質量がほぼ同じ豚ロース肉と比べると、エネルギーは約半分、脂質は約5分の1と、低エネルギー低脂質でかなり効率的にたんぱく質がとれる食品です。

EPAとDHA

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は青魚の脂に多く含まれるオメガ3系脂肪酸です。人間の身体の中では作ることができないため、食事で摂取する必要があります。
中性脂肪は、摂り過ぎたエネルギーを体内で貯蓄するために肝臓で合成されています。
EPAやDHAは、この合成する働きを抑制する効果があるので、結果として、中性脂肪の減少に繋がります。
特に朝食時は、これから1日を活動するために体のエネルギー代謝が活発になっている時間帯です。このタイミングでDHAやEPAを摂取することで、より高い効果が発揮されることが、近年の研究でも示唆されています。朝定食で定番の“アジの開き”は栄養摂取としても理にかなっていたのですね。

カルシウム

アジには、骨や歯を丈夫に保つのに欠かせない「カルシウム」が含まれています。
特に、骨ごと食べられる小アジの南蛮漬けや丸干しで食べると、カルシウムを効率よくとることができます。また、骨だけでなく皮にもカルシウムが多く含まれていますので、皮つきで食べることでカルシウムを無駄なく摂取できます。

カルシウムは吸収率が低い栄養素の1つで、アジにはカルシウムの吸収を助けるビタミンDも含まれており、効率的にカルシウムを取り入れられます。

カルシウム・マグネシウムバランス

マグネシウムには、神経の興奮を抑える働きがあり日々のストレス改善につながりますが、
カルシウムとマグネシウムを効率よく吸収し体内で使うには、カルシウム:マグネシウムの摂取量の比率は2:1が望ましいとされています。
アジに含まれるカルシウムとマグネシウムは理想的な比率となっているため、1食で効率的に栄養素を取り入れることができます。


アジの目利きポイント

<一尾でみるとき>

<刺し身でみるとき>


保存方法

青魚に含まれるEPAやDHAは化学的に不安定な不飽和脂肪酸のため、熱や光、空気などで酸化し傷みやすいです。そのため、購入したら早めに使用するか、適切に処理し保存することが必要です。

① 鱗を包丁でとり、尾から腹にかけて連なったトゲ状のゼイゴと呼ばれる部分を削ぎ落
② 内臓を取り除き、3枚におろす
 ※おろさず頭を残す場合にも、内臓とエラは取り外す
③塩水でよく洗い、水気を拭き取ったら一つ一つラップで包み、保存袋に入れ冷蔵庫で保存する

食べきれないときは③まで処理したものを冷凍用の保存袋に入れ、冷凍庫で保存しましょう。
保存の目安は冷凍庫で1カ月程度です。


調理別のおすすめ料理

【生食】たたき、なめろう

春から夏の旬には脂がのって美味しく召し上がれるため、生食がおすすめです。
「たたき」や「なめろう」でネギや生姜、みょうがなどの香味野菜と一緒に食べると、アジの風味がさらに引き立ちます。

※生で食べる場合は、アニサキスという寄生虫に感染するリスクがあるため注意が必要です
   アニサキスは主に内臓の表面に寄生していますが、鮮度の低下や時間経過とともに可食部内へ
 移動する場合があります

*対策方法     
・新鮮な魚を選び、丸ごと1匹で購入した際は速やかに内臓を取り除く
 ※内臓を生で食べることは避ける
・目視で確認しアニサキスを除去する
・購入して持ち帰る際は、鮮度が落ちないよう、氷や保冷剤で冷えた状態を保つ
・解凍と書かれた刺身やサクを選ぶ
 ※加熱(中心温度60度以上で1分以上)、冷凍(マイナス20度以下で24時間以上)によって
 アニサキスは死滅します

【焼く】塩焼き、干物

シンプルでありながらアジの旨味を最大限に引き出す定番料理です。新鮮なアジに軽く塩を振り、皮がパリッとするまで焼くだけで、香ばしい香りとともにふんわりとした身が楽しめます。特に旬の時期は脂がのっているため、大根おろしや薬味を添えてさっぱりと食べるのもおすすめです。

また、干物にすることで旨味が凝縮され、保存性も高まります。
干物は手軽に取り入れやすい調理法のひとつですので、ぜひ活用しましょう。
冷凍保存された干物を調理する際は、“冷凍のまま焼く”のがポイントです。
解凍時に栄養素や旨みが水分と一緒に流れてしまうのを防ぐことができます。

*干物の注意点
干物は加工する際に塩を加えているため、食べる時にはほどよく味がついている状態です。
したがって、醤油は少量にしたり、そのまま何もかけずに食べる、または調味していない野菜などと合わせることで塩分もコントロールしやすくなります。

【揚げる】マリネ、南蛮漬け

アジを素揚げして、玉ねぎや人参と一緒に甘酸っぱい南蛮酢に漬け込む「アジの南蛮漬け」は、気温の上がる時期にぴったりの一品です。日持ちする上、冷たい状態でも美味しく食べられるため、作り置きのお惣菜やお弁当のおかずにもなります。

アジを揚げることで骨まで柔らかくなり、丸ごと食べられる点や、お酢と組み合わせることでアジのEPAやDHAの酸化を防ぐことができ、無駄なく栄養素を取り入れることができます。とくにアジの中でも小アジは、骨ごと、かつ皮ごと食べられるためさらにカルシウムアップします。


おすすめレシピ

刺身で手軽に作れて日持ちもする、さっぱりとした酸味が特徴のマリネ。
ビタミンや食物繊維も一緒にとることができ栄養バランスも彩りもばっちりです。
食欲が落ちやすい季節にもぴったりのさわやかな味わいを楽しめます。

アジの簡単マリネ

【材料】2人分
・アジ(刺身)    1尾分(80g) 
・玉ねぎ       1/4個(50g)
・ミニトマト     1/2パック(10個)
・かいわれ大根    1/4パック(20~30g)
・大葉        5枚
(マリネ液)
・オリーブオイル     大さじ2
・ポン酢         大さじ2
・レモン汁        小さじ1
・ブラックペッパー    適量

【作り方】 
1. マリネ液の材料を混ぜ、保存容器に移します。
2. 玉ねぎは薄切りに、アジは食べやすい大きさに切り、1に入れて軽く混ぜます。
3. 半分に切ったミニトマト、根を切り落としたかいわれ大根、千切りにした大葉を入れて軽く混ぜて完成です。

【ワンポイント】
刺身以外に、骨ごと食べられる小アジや豆アジなどを素揚げして、南蛮漬けとしてもアレンジできます
・ピーマンやパプリカ、なすやかぼちゃ、ズッキーニなど、これから旬を迎える夏野菜をプラスするのもおすすめです