ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

TEL. 03-3962-5100

栄養コラム

食中毒を防ぐ工夫

No.150

2016年6月1日

管理栄養士 田口 瑛里沙

6月といえば梅雨の季節ですね。沖縄ではひと足早く5月下旬に梅雨入りし、これから全国的にじめじめと湿気の多い暑い日々がやってきます。この時期に最も発症しやすいのが「食中毒」です。食中毒は、家庭で発生することも珍しくなく、飲食店に次いで2番目に多いと報告されています。食中毒対策についてしっかり把握しておきましょう。
2016061


身近で起こりうる食中毒

食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルスがついた食べ物を食べることで、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状を伴う病気のことです。
先月、熊本地震で指定されている避難所で集団食中毒が起こりました。その原因は、昼食に配られたおにぎりに付着した「黄色ブドウ球菌(※)」によるものでした。調査によると調理時に問題はなく、おにぎりに菌が付着した過程は不明ですが、避難所へ運ぶ際に温かいまま発泡スチロールで保管していたことにより菌が増殖し、食中毒が発生したと考えられています。
このように食中毒は身近で起こりやすく、家庭でもお弁当や残り物を食べたとき、バーベキューのときなどで発症することが多いといわれています。

(※)黄色ブドウ球菌・・・人や動物の皮膚に存在し、傷口などから感染することがあります。手作りのおにぎりやサンドイッチ、お弁当が発症源になることが多く、潜伏期間はおよそ2~4時間で、嘔吐や下痢などの症状があらわれます。


食中毒予防の3原則

食中毒のもととなる細菌やウイルスは、種類によって特徴は様々ですが、厚生労働省では、食中毒予防対策として「食中毒予防の3原則」を掲げています。

(1)菌をつけない
食材に菌をつけないように、手や調理器具等を清潔な状態で保ち、調理しましょう。
【ポイント】
・手は指先、指の間までしっかり石鹸で洗う。消毒をしたり、手袋をつけるとより
 安心。
・調理器具は、調理のたびにこまめに洗う。まな板は、片面を肉と魚用、もう片面を野菜用などに分けるとより安全。

(2)菌を増やさない
調理後常温の状態のまま放置しておくと菌が急速に増殖するので、すぐに食べない場合は早めに冷却保存しましょう。冷蔵庫の冷蔵室保存で増殖が遅くなり、冷凍室保存で増殖は停止します。
【ポイント】
・肉や魚などの生鮮食品や調理済み惣菜は、購入後早めに冷蔵庫に入れる。
・家庭料理でも調理後2時間以内に食べ、食べない場合はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に
 入れる。
・冷蔵庫内でも増殖は進むため、できるだけ早めに食べる。

(3)菌をやっつける
ほとんどの細菌は加熱することで死滅します。肉や魚はもちもん、野菜も加熱調理すると安全です。また、包丁などの調理器具も洗剤でよく洗ったあと、熱湯をかけたり、アルコール消毒して殺菌すると良いでしょう。

【ポイント】
・肉や魚介類は、中心部まで十分に加熱する。

これらの3原則は食中毒を予防する上で重要なことです。さらに増殖スピードを遅らせる食材や味付け、調理などの工夫も加えると、より食中毒のリスクが低減します。


食中毒のリスクを低減させる工夫

●抗菌作用のある食材・調味料を活用する
梅干しに含まれるクエン酸と食塩、にんにくに含まれるアリシン、酢の酢酸など、食材に含まれる成分に抗菌作用があり、料理に追加することで料理全体の菌の増殖を遅らせることができます。

【抗菌作用のある食材】
梅干し、にんにく、しょうが、しそ、唐辛子 など

(活用例) ご飯に・・・・梅干しを混ぜる 
      肉や魚料理に・・・・にんにくやしょうがをすりおろして追加する
      和え物に・・・・葉物野菜や根菜、きのこ類などの和え物に唐辛子を加える
      サラダに・・・・しょうがやしそを千切りにして和える

【抗菌作用のある調味料】
酢、わさび、からし など

(活用例) ご飯を・・・・酢飯にする
      野菜を・・・・ピクルスにする、わさびやからしで和える
 
●保存性を高める味付けにする
菌は水分が多いと繁殖しやすくなります。食塩や砂糖などの調味料には脱水作用があり、食品中の水分を外へ出したり、しっかり抱え込んだりして、菌が繁殖しにくい状態をつくるため、やや濃いめ・甘めの味付けにすると保存性が高まります。

【保存性を高める調味料】
食塩、砂糖 など

(活用例) 肉や魚を・・・・煮物にする、佃煮にする
      野菜を・・・・塩漬けにする、甘煮にする

以上のように抗菌作用のある食材や調味料を活用すると、保存性が高まり菌の増殖を抑えられますが、時間が経過するにつれて少しずつ菌は増殖しますので、早めに召し上がることをおすすめします。


家庭での食中毒が多い場面と具体的な対策

●手作り弁当を持っていくとき
【対策】
・おにぎりはラップを使ってにぎる
・抗菌作用のある食材を活用する(梅干し、しょうがなど)
・保存性を高める味付けにする(卵焼きは砂糖を加えて甘めに作るなど)
・汁がない料理を入れる
・良く冷ましてから蓋をする
・持ち運ぶときは保冷バックや保冷剤を活用する
・ソースや醤油は、かけずに別容器に分けて持っていく

●残り物がでたとき
【対策】
・常温で置いたままにせず、早めに冷蔵庫に入れて保存する
・食べるときは再加熱する
(特にカレーやみそ汁などの汁物は、良くかき混ぜながら沸騰するまでしっかり加熱する)


おすすめレシピ

抗菌作用のある「梅干し」「しそ」を使用し、この時期にさっぱりと食べられるレシピをご紹介します。お弁当に入れたり、作り置きにもおすすめの一品です。

●梅しそ入りさっぱりハンバーグ

【材料】(2人分:小4個分)
・牛豚合びき肉 ・・・200g
・梅干し ・・・中4個
・しそ ・・・2枚
・玉ねぎ ・・・1/2個
・卵 ・・・1個
・パン粉 ・・・1/4カップ
・牛乳 ・・・1/8カップ
・塩 ・・・少々
・こしょう ・・・少々
・油 ・・・大さじ1/2

[おろしソース]
・大根おろし ・・・大さじ4
・ポン酢 ・・・大さじ2

[トッピング]
・しそ千切り ・・・1枚

【作り方】
1.玉ねぎはみじん切りにし、耐熱皿に入れ、ラップをして、600Wで1分加熱します。
2.パン粉に牛乳を入れふやかし、卵は溶いておきます。
3.しそは細かくみじん切りにし、梅干しは種を取り出してみじん切りにします。
4.ボウルに合びき肉、加熱した玉ねぎ、ふやかしたパン粉、溶き卵、塩、こしょうを入れ、粘
  りが出るまで混ぜます。
5.4に3を入れ、全体をよく混ぜ合わせます。
6.5を4等分にわけ、手に取り空気を抜きながら形を整え、中心部をくぼませておきます。
7.フライパンに油を入れ軽く熱し、6を中火で片面を焼き、焼き色がついたら裏返して蓋を
  閉め、弱火で蒸し 焼きにします。
8.ハンバーグを軽く押し透明の肉汁が出てきたら焼きあがりです。
9.焼きあがったハンバーグをお皿に盛り、おろしソースをかけ、トッピングのしそ千切りをの
  せたら完成です。

【お弁当に使う場合】
・1つのサイズを小さく作るとお弁当に入れやすくなります。
・梅干しやしその味があるため、ソースやしょうゆなどなしで食べられます。

【食中毒を防ぐ保存方法】
・冷蔵保存の場合:焼いたハンバーグをお皿に盛り、ラップをして保存しましょう。
・冷凍保存の保存:焼いたハンバーグの粗熱をとり、1個ずつラップで包んで保存しましょう。
※食べるときは、必ずレンジ、またはフライパンで再加熱しましょう。