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栄養コラム

夏を乗り切る、スタミナアップの食事

No.260

2025年8月1日

管理栄養士 豊泉友加里

暑さが続く夏は食欲が落ちたり、冷たいものばかり食べてしまったりと食生活が乱れがちです。その結果、体がだるい・疲れが取れない・胃腸の調子が悪いといった夏バテの症状が起こりやすくなります。また、体温調整がうまくいかず、熱中症のリスクも高まります。
こうした不調を防ぐには、日頃の食事がとても大切です。今回は、夏を元気に乗り切るための食事の工夫をご紹介します。


穀類“だけ”の食事に注意しましょう

暑い日が続くと、さっぱりと食べられる冷たいそうめんやうどん、そばが多くなったり、おにぎりだけ、パンだけなど穀類のみの手軽な食事に偏りがちではありませんか。
そうめんやおにぎりだけなどの「炭水化物」は体にとって効率の良いエネルギー源ですが、それだけの食事に偏ってしまうと、たんぱく質や脂質など必要な栄養素が不足しやすくなります。

日々のスタミナや、体づくり、疲れた体を修復するためには「炭水化物」だけでなく、「たんぱく質」と「脂質」の栄養素が必要です。これらをバランスよくとることが代謝をスムーズにし、健康的な体調維持や疲労予防につながります。特にたんぱく質は体の修復や、筋肉、ホルモンなど体の材料となり、不足すると疲れやすくなったり、代謝が低下したりする原因にもなります。暑さで食欲が落ちやすい夏場こそ、バランスの良い食事を心がけることがスタミナアップのポイントです。

たんぱく質を毎食取り入れましょう!

摂取したたんぱく質は、筋肉や血液、内臓など体の組織をつくる大切な材料として24時間絶えず使われており、スタミナを保つうえでも欠かせない栄養素です。不足すると、体は筋肉を分解して補おうとするため、筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。これにより体力が落ち、疲れやすさやだるさが続くなど、夏バテの原因となることもあります。
さらに、筋肉内に蓄えられるエネルギー源も減少するため、スタミナが持続しにくくなります。
夏を元気に乗り切るには、たんぱく質を多く含む肉・魚・卵・大豆製品などの取り入れやすい食品をうまく活用して、毎食たんぱく質をしっかり摂ることが大切です。

 


組み合わせたい栄養素

たんぱく質とともに、代謝を助けるビタミンB群、免疫力の維持やストレスや疲労への抵抗力を高めるビタミンC、疲労回復に役立つクエン酸をあわせて取り入れましょう。

ビタミンB1

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える際に欠かせない栄養素です。不足することにより、糖質から十分なエネルギーを得ることができず、疲れやすくなったり、食欲がなくなるなど、
体の不調につながることもあります。糖質だけでなくビタミンB1をしっかりとることで、エネルギー効率を高めて疲労回復や夏バテ防止につながり、夏を元気に乗り切ることができます。

【夏はビタミンB1不足になる落とし穴がある!】
暑い季節は、そうめんや冷たい麺など炭水化物中心の食事が増えやすく、さらにジュースやアイスなど甘い飲み物やお菓子の摂取も多くなりがちです。これらの食品は糖質が多く含まれる一方で、ビタミンB₁はほとんど含まれていないため、糖質の摂取量が増えるほど、ビタミンB₁が不足しやすくなるという落とし穴があります。糖質の摂りすぎに気をつけながら、ビタミンB群を含む食材を意識的に取り入れることが大切です。

●ビタミンB1を多く含む食品:豚肉、卵、うなぎ、大豆、玄米ごはん など

【主食の種類を変えるだけでもビタミンB1不足を解消!】
ビタミンB₁は穀物の胚芽部分に多く含まれているため、白米など精製された主食ほどビタミンB₁の量は少なくなります。
ごはんを玄米や胚芽米に、パンを全粒粉パンにしたり、全粒粉のシリアルやオートミールを選ぶなど主食を少し変えるだけで、自然にビタミンB1を補うことができます。


ビタミンC

免疫力の維持や鉄の吸収促進に関わり、ストレスや疲労への抵抗力を高める栄養素です。
ビタミンCは水に溶けやすく、汗と一緒に体外へ失われやすい栄養素です。そのため、汗をかきやすい夏は知らないうちに不足していることもあります。
さらに、ストレスや喫煙、気温差などによっても消費されやすく、外の暑さと冷房の温度差がある夏は特に不足しがちです。風邪予防や健康維持のためにも、毎日の食事でビタミンCをしっかり補いましょう。

ビタミンCを多く含む食品:ブロッコリー、ピーマン、ゴーヤ、かぼちゃ、トマト など

【夏野菜はビタミンCが豊富!】
夏に旬を迎える夏野菜の多くにビタミンCが含まれています。
ピーマン・かぼちゃ・トマトなど、色鮮やかな夏野菜を意識してとり入れましょう。中でもゴーヤは、ビタミンCが豊富。独特の苦味がありますが、炒め物や和え物にすることで食べやすくなります。


組み合わせると効果的な成分と食材

クエン酸

クエン酸は人の体内にも存在する有機酸の一種で、ブドウ糖を無駄なく素早くエネルギーに転換するために重要な成分です。エネルギーを効率よく生み出して疲れをとったり、スタミナを保ちます。また、吸収しにくいミネラルと結びついて吸収しやすくする働きもあります。

クエン酸を多く含む食品:酢、梅干し、かんきつ類 など

硫化アリル

硫化アリルは、におい成分として香味野菜に多く含まれる成分で、ビタミンB1の吸収を助ける働きがあり、ビタミンB1と一緒に摂ることで糖質を効率よくエネルギーに変えるサポートもしてくれます。スタミナを維持したいときや、疲れがたまりやすい時期に特に取り入れたい成分です。

硫化アリルを多く含む食品:玉ねぎ、にんにく、ねぎ など


夏のスタミナアップに!おすすめの食事例

暑さで食欲が落ちやすい夏こそ、バランスよく栄養をとることがスタミナ維持のカギ。
そこで、夏のスタミナアップにおすすめの食事例をご紹介します。どれか1食でも意識して取り入れることで、夏を元気に乗り切るサポートになります!

【朝】時間がない朝におすすめの食材

▶ ヨーグルト/牛乳/ゆで卵 など

時間がない朝は手軽なたんぱく質食品を1品プラスして、1日のリズムを整えていきましょう

朝食にたんぱく質をとることで、体内時計が整い、日中の代謝や生活リズムがスムーズになります。また、朝はたんぱく質の吸収効率が高く、筋肉の合成も促されやすい時間帯です。
さらに体温を上げて代謝を助ける働きもあるため、朝のたんぱく質摂取は一日のエネルギーづくりに役立ちます。忙しい朝こそ、ゆで卵やヨーグルトなど手軽な食品で、しっかりたんぱく質をとる習慣をつけましょう。

【昼】午後のスタミナ維持におすすめのおかず

▶たんぱく質食品(肉、魚、卵、大豆製品)+玉ねぎ、ネギ、ニラ
 例:生姜焼き、ニラ玉、麻婆豆腐など 

外食やコンビニを利用する時も、選び方次第でスタミナアップにつながります。

豚肉や卵、大豆製品には疲労回復ビタミンB1が含まれており、午後のエネルギー源のご飯や麺類の穀類と組み合わせることでエネルギーを効率よく使うサポートをしてくれます。
また、玉ねぎやニラと一緒にとることでビタミンB1の吸収が高まり、午後も元気に過ごすためのスタミナ補給につながります。

【夜】今日の疲労回復におすすめのおかず

▶たんぱく質食品(肉、魚、卵、大豆製品)+酢、酢の物、梅干し 
 例:鶏ささみときゅうりの梅しそ和え、豆腐のもずく酢かけ、酸辣湯(サンラータン)など

夕食では、なるべく脂質を抑えたさっぱりとしたメニューを選ぶことで、胃に負担をかけずに必要な栄養素をしっかり補うことができます。

脂質の少ないたんぱく質食材(鶏ささみ、豆腐など)と、疲労回復が期待できるクエン酸を含む食材(酢や梅干しなど)の組み合わせがおすすめです。酢や梅干しの酸味で食べやすさもアップし、野菜と一緒にとることでビタミンや食物繊維も同時に補えるバランスの良い副菜になります。また、もずく酢など市販の食材を活用すれば、手軽に一品プラスできます。


おすすめレシピ

暑い季節に食べやすい麺類は、タレを工夫するだけで、栄養バランスもぐっとアップします。今回は和・洋・中それぞれの味わいを楽しめる「そうめんダレの簡単アレンジ」をご紹介します。

和風アレンジ

たんぱく質もビタミンB群も豊富な納豆と、酢のクエン酸で疲労回復効果も期待できます。

【材料(1人分)】
 納豆          1パック(約50g)
 オクラ       2本
 めんつゆ(2倍濃縮) 大さじ2
 酢         小さじ1/2
 大葉        2~3枚
 そうめん      1~2束(約50~100g)※表記通りに茹でて氷水で冷やし水気をきる

【作り方】
1.納豆はタレ、からしを入れてよく混ぜる。
2. オクラは沸騰したお湯で1~2分程茹でて、ヘタを切り落とし、薄切りにします。
(電子レンジの場合:耐熱皿にオクラを並べてラップをふんわりとかけ、電子レンジ600Wで1分30秒~2分加熱します。)
 *このときオクラを細かく刻み、よくたたくとさらにねばりが出ます
3.茹でた麺の上に①、②をかけて、めんつゆ、酢を混ぜ合わせたものをかけます。
千切りにした大葉をのせて完成です。

【ワンポイント】
・そうめんだけでなく、そば・うどんなど様々な麺類にも合います
・めんつゆと酢はポン酢で代用もおすすめです。
・麺と一緒にオクラをゆでることで手間いらずに。

 

洋風アレンジ

抗酸化成分のリコピンや良質なたんぱく質も摂れ、暑い時にもさっぱりといただけます。

【材料(1人分)】
 ツナ缶       1/2缶(約35g)
 カットトマト     大さじ2(約30g)
 めんつゆ(2倍濃縮) 大さじ1
 オリーブオイル   大さじ1/2
 おろしにんにく      少々
 (チューブ可)
 大葉         お好み
 そうめん       1~2束(約50~100g)※表記通りに茹でて氷水で冷やし水気をきる

【作り方】
缶汁をきったツナに、カットトマト・めんつゆ・オリーブオイル・おろしにんにくを加えて混ぜ、冷蔵庫で冷やしておきます。お好みで千切りにした大葉を添えて、そうめんに絡めながら召し上がりください。

【ワンポイント】
・ツナ缶をサバ缶に変えることで栄養価も食べ応えもアップに。
・トマト缶の代わりにトマトを丸ごと冷凍してすりおろしして加えるとで旨味と清涼感がプラスできます

 

中華アレンジ

たんぱく質やカルシウム、ビタミンEも補える夏バテ予防にもぴったりのレシピです。

【材料(1人分)】
 豆乳          1/2カップ(100ml)
 めんつゆ(2倍濃縮) 大さじ2
 すりごま        大さじ2
 酢           小さじ1/2
 ラー油           適量
 小ねぎ         お好み
 そうめん        1~2束(約50~100g)※表記通りに茹でて氷水で冷やし水気をきる

【作り方】
材料をすべて混ぜて冷蔵庫で冷やし、お好みで小ねぎを添えて、そうめんのつけダレとして召し上がりください。

【ワンポイント】
・蒸し鶏やひき肉をプラスしてたんぱく質アップに。
 サラダチキンや、うずらの卵水煮を活用するのもおすすめです
・きゅうりやトマトなど夏野菜を加えることで栄養バランスが整い、彩りもよくなります。