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栄養コラム

レバー

No.258

2025年6月2日

管理栄養士 豊泉友加里

レバーは、牛・豚・鶏などの「肝臓」のことを指し、日本の食卓でも昔から親しまれてきた食材です。栄養価が高い一方、独特な臭みがあり苦手意識を持つ人も少なくありません。
今回はレバーの栄養素やおすすめの調理法、食べ方を紹介します。


レバーとは

今ではスタミナ料理の定番として親しまれている「レバニラ炒め」に使われるレバーですが、
明治時代に肉食が解禁された当初は、あまり一般の人には食べられていませんでした。そんなレバーが広く食べられるようになったきっかけは、終戦直後の闇市です。当時は米や肉が配給制で自由に手に入らない中、レバーなどの内臓は規制の対象外だったため、手に入りやすい食材でした。そのため、庶民の食卓でも多く取り入れられ、今では焼き鳥の定番メニューの一つにもなっています。

日本では主に牛・豚・鶏のレバーが流通していますが、馬・山羊・ガチョウなどのレバーも食用で存在します。世界三大珍味のひとつである「フォアグラ」は、ガチョウやカモに高栄養の飼料を与えて肥大化させた肝臓を使用したもので、レバーの一種に分類されます。


レバーの種類と特徴 


栄養的特長

レバーは栄養価の高い食品として知られていますが、特にビタミンB2、B12、葉酸そして鉄分の含有量が非常に多いことが特長です。なかでもビタミンB12と葉酸の含有量は、他の食品と比べて群を抜いて高く、健康づくりにおいて重要な役割を果たします。

ビタミンB12と葉酸

ビタミンB12と葉酸は、赤血球をつくるのに必要なビタミンで、不足すると「巨赤芽球性貧血」という貧血を引き起こすことがあります。さらに、細胞の合成や修復を助ける働きがあり、成長期の発育や疲労回復、粘膜の健康維持にも役立ちます。特に葉酸は妊娠初期の胎児の正常な発育にも欠かせません。

また、これらのビタミンはホモシステインというアミノ酸の分解にも関与しており、不足するとホモシステインが血中にたまりやすくなり、動脈硬化のリスクが高まることが分かっています。そのため、ビタミンB12と葉酸を不足させないようにすることは、動脈硬化の予防にもつながります。

さらに、ビタミンB12と葉酸の両方を豊富に含む食材は少なく、レバーには、これらと一緒に摂ることで心筋梗塞のリスクを下げる効果があるとされるビタミンB6もバランスよく含まれており、血管の健康維持や生活習慣病の予防に役立つ食材といえます。

高たんぱく質、低脂質

ほかの肉類と比べても、レバーはたんぱく質が豊富で、脂質やエネルギー量が少なめです。
たんぱく質をしっかり摂りながら、脂質やカロリーは控えたい方におすすめです。

鉄分

鉄分の含有量は非常に多く、とくに豚レバーは牛レバーの3倍以上、鶏レバーの1.5倍近く含まれており、鉄分を多く含む小松菜やほうれん草と比べても突出しているのがわかります。

さらに、レバーに含まれる鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれ、体内への吸収率が高いのが特長です。良質なたんぱく質も多く含まれており、たんぱく質と鉄分が結合することで腸からの吸収を助け、効率的に吸収することができます。
また、ヘム鉄は肝臓の機能を活性化させる働きもあり、貧血予防だけでなく全身の代謝を支える効果も期待できます。

ビタミンA

ビタミンAは、目の健康維持や皮膚・粘膜を健やかに保つ働き、さらには免疫機能を正常に保つうえでも欠かせない栄養素です。
レバーはビタミンAの含有量が非常に高く、100gあたり牛レバーで1,100μg、豚レバーで13,000μg、鶏レバーで14,000μg含まれます。緑黄色野菜をしのぐレベルで、食品の中でもトップクラスです。


食べすぎ注意

ビタミンA

レバーに多いビタミンAは脂溶性で体に蓄積されやすいため、過剰に摂ると頭痛やめまいの原因になります。成人1日あたりのビタミンAの耐容上限量(長期的に摂取しても健康被害のリスクがないとされる最大摂取量)は、2,700μgですので、週に1〜2回の頻度で1回あたり20~30g(焼き鳥約1本分)未満を目安に食べ過ぎに注意しましょう。

プリン体、コレステロール

プリン体をとりすぎると血液中の尿酸値が上がり、高尿酸血症や痛風のリスクが高くなります。
レバーにはプリン体が多く、焼き鳥1本分(約30g)で93.6mgも含まれ、1日の摂取目安量  (約400mg)の約1/4に相当します。さらにレバニラ炒めなどで使われる豚レバーでは、1食50gあたり142mgものプリン体を含むため、食べるときは量や頻度を調整したり、他のプリン体の多い食品との組み合わせを避けるなどの工夫をしましょう。

また、コレステロールも多く含まれており、焼き鳥1本分(30g)で111mgと、1日の目安とされる摂取量(200mg未満)の約半分に相当します。生活習慣病の予防のためにも、摂りすぎに注意して適量を心がけましょう。


生食は禁止

かつては人気だった「生レバー」ですが、平成27年6月から食品衛生法に基づいて、豚の肉や内臓を生食用として販売・提供することを禁止しました。
豚レバーや牛レバーにはE型肝炎ウイルスやO157、カンピロバクターなどの食中毒菌が存在する可能性があり、重篤な症状を引き起こす危険性があります。
※加熱調理(中心温度75℃で1分以上)で菌は死滅するので、しっかり火を通して食べましょう 


おいしく食べるコツ

レバー独特の臭みは、血抜きをしたり、牛乳や酢につけることで軽減できます。
まず、切ったレバーは流水でよく洗い、水にさらして血抜きをすることが基本です。
その後、牛乳や酢に15~30分ほど浸けておくと臭みがやわらぎます。
調理の際に生姜やにんにく、スパイスなど香りの強い食材を使うと、風味豊かで食べやすくなります。

おすすめの食べ方

炒める
しょうが、にんにく、味噌、カレー粉などが臭み消しに効果的です。
「鶏レバーとこんにゃくのピリ辛炒め」:食物繊維もとれるバランスおかず
「豚レバーとにらの中華炒め」:にらに含まれるビタミンや鉄が含まれ、吸収率もアップ

揚げる
衣で臭みを抑え、食べやすく仕上げることができます。
「牛レバーのレモンマリネ」:揚げた薄切りレバーとレモン果汁でさっぱりと

レバーペースト
しっかり火を通してペーストにすれば、臭みもやわらぎ食べやすくなります。
パンに塗ったり、ミートソースやカレーなどに加えてコク出しにも活用できます

栄養の吸収を高める食べ合わせ

レバーに含まれる鉄分は、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂ることで吸収率が高まるという特徴があります。ブロッコリーやパプリカ、にんじんなどのビタミンCが豊富な野菜、またレモンや梅干し、お酢などの酸味のある食品と組み合わせることで、より効果的に栄養を取り入れることができます。

ビタミンCが豊富な食品:ブロッコリー、パプリカ、にんじん など
クエン酸が豊富な食品:レモン、梅干し、酢 など


おすすめレシピ

今回はスタミナ料理の定番「レバニラ炒め」を、市販の焼き鳥(レバー串)とカット野菜を使って簡単に調理時間が短縮できるレシピをご紹介します。
ビタミンCが多いブロッコリーと組み合わせて鉄分の吸収も高まるレシピになっていますのでぜひご参考ください。

簡単・時短レバニラ炒め

【材料(1人分)】
・焼き鳥(レバー串)      1本(約30g)
・カット野菜ミックス       1/2袋(約100g)
(もやし・ニラ入り)      
・ブロッコリー           4~5房(約40g)
(冷凍または下茹でしたもの) 
・ごま油              小さじ1
・おろしにんにく(チューブ可)  少々
・しょうゆ             小さじ1/2
・オイスターソース       小さじ1/2
・酒                小さじ1/2

【作り方】
1.焼き鳥の串を外し、大きい場合は一口大に切ります。
2.フライパンにごま油とおろしにんにくを入れて熱し、
    カット野菜とブロッコリーを加えて中火で炒め、野菜に火が通ったら焼き鳥を加え、
    さらに炒め合わせます。
3.しょうゆ・オイスターソース・酒を加え、全体になじませて完成です。

合わせる野菜はカット野菜以外にもミックスベジタブルや、いんげん等の冷凍野菜を活用しても手軽に栄養価が増えておすすめです