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栄養コラム

海藻

No.231

2023年3月1日

瀬谷理絵

わかめやひじきなどの海藻を食べる機会はありますか。
海藻は海の緑黄色野菜とも呼ばれ、低エネルギーなうえに栄養価が高く、毎日摂りたい食材です。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことにより、海外でも海藻が注目されているようです。
今回はそんな海藻の魅力をご紹介します。


日本の食文化と海藻

四方を海に囲まれた日本では、海藻は魚や貝類と並んで「海の幸」の一つであり、1000年以上前から神事やしきたりで用いたり、食用として取り入れてきました。
だしを昆布でとったり、わかめやとろろ昆布を味噌汁に入れたり、ご飯のお供の焼き海苔や海苔の佃煮、他にもわかめの酢の物、ひじきの煮物、昆布巻きやのり巻きなど海藻を用いた料理もたくさんあり、古くから海藻は日本の食文化に根付いています。


海藻とは

海藻は海の中に生える藻類のことを指し、地上に生えている植物と同じように光合成をおこなっています。また、胞子によって繁殖し、茎・葉・根に分かれていないことも特徴です。海藻の種類は非常に多く、食用とされているものだけでも100種類以上あると言われています。
海藻は「緑藻類」「褐藻類」「紅藻類」の3種類に分類されます。これらの違いは、海藻が生息
する深さによって、日光を浴びる量が異なる点です。緑藻類→褐藻類→紅藻類という順番で水深が深くなります。

・緑藻類…浅瀬に生えている海藻で、葉緑体を多く含んでおり、
     最も陸上にある植物に近い構造をしている
      例:あおのり・海ぶどう・あおさ など
・褐藻類…褐色や赤褐色をしていることが特徴で、黒っぽい色をした海藻が多い
      例:こんぶ・わかめ・ひじき・もずく など
・紅藻類…3種類の中で最も水深が深いところに生えている海藻で、
     赤っぽい色をしていることが特徴
      例:あまのり・とさかのり・てんぐさ・おごのり など


海藻の特徴

日本でよく食べられている海藻の特徴をご紹介します。

こんぶ

深さ5~7mの海中で光合成をおこなって成長する海藻で、大きさは長さ2mくらいのものから、
大きいものでは10m以上にもなります。日本では北海道沿岸と、東北沿岸に生育しており、
「真昆布」「利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」「がごめ昆布」などが有名です。
こんぶに含まれるナトリウム・カリウム・ヨウ素(ヨード)などのミネラルは
牛乳の23倍、カルシウムは7倍、鉄分は39倍にもなり、吸収率も約80%ととても高いと言われています。また、アルカリ性の食品で、酸性に傾きがちな体を本来の弱アルカリ性に保つ働きがあります。

わかめ

日本では北海道から九州に広く分布しています。わかめは褐藻類に分類され、生では褐色や赤褐色をしていますが、湯通しすると鮮やかな緑色に変化します。一般的に食されているのは葉状部で、根っこの部分(=胞子葉と呼ばれる、胞子を作り出すひだ状の部位)は「めかぶ」として、中茎と元茎は「茎わかめ」として食されています。生だけでなく、乾燥・塩蔵などの加工法がありますが、栄養価にそれほど大きな差はありません。食物繊維の他、ヨウ素やβ-カロテン(*)、ビタミンCなども多く含んでいます。
*植物性食品に含まれるカロテノイドで、ビタミンAの一種

ひじき

岩場に生息しており、全長1mほどまで成長します。茎上の長い部分(主枝)のみを使用したものは「長ひじき」と呼ばれており、歯ごたえがしっかりしているのが特徴です。炒め物や煮物・和え物に適しています。先端の芽や小枝のやわらかい部分のみを使用したものは「芽ひじき」と呼ばれており、他の食材と絡みやすいのが特徴です。サラダや炊き込みご飯に適しています。カルシウムとマグネシウム・鉄分がバランスよく含まれています。

もずく

温かい地方の浅い海に生息する、細長い形状で枝分かれのある糸状藻類です。細くて口当たりのなめらかな「糸もずく」と、歯ごたえのある「太もずく」の2種類あります。流通の9割ほどが「沖縄もずく」で、太くてぬめりが少ないのが特徴です。その他に「能登もずく」「佐渡もずく」など細かくてぬめりの強い品種もあります。酢の物などに使われることが多いため、
他の海藻に比べてたっぷり食べられる食材です。骨や歯の健康を守るカルシウムやマグネシウムなどのミネラルも含まれています。

のり

「のり」という名前の単独の植物ではなく、様々な「あまのり類」の総称になります。
産地によって味や食感などの特徴が異なります。有明産や瀬戸内海産の海苔が有名です。一度に食べる量は少ないですが、食物繊維・たんぱく質・β-カロテン・ビタミンBを多く含んでいます。


海藻の栄養

海藻には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。下のグラフは、各食品1食分の栄養比較として、レタスの栄養素を1とした時、キャベツ・こんぶ・わかめ・ひじき・もずく・のりが何倍になるかを示しています。
食べる機会の多いキャベツやレタスと比較しても、海藻は1回あたりの摂取量が少ないにもかかわらず栄養価が高いことが分かります。

「野菜と海藻の栄養価の比較(1食分あたり)」

八訂:日本食品標準成分表2020年度版 参照

※1食分の目安量
レタス・キャベツ:50g(サラダ小 1皿分)
わかめ・ひじき・もずく:30g(小鉢 1皿分)
のり:2g(1枚分)
こんぶ:10g(刻み昆布で小鉢 1皿分)

その他にも、海藻には特徴的な栄養成分がありますのでご紹介します。

グルタミン酸
主に含まれる海藻:こんぶ
イノシン酸・グアニル酸と並ぶうま味成分の一つです。うま味成分は単体でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれ、うま味が何倍にも強くなることが分かっています。昆布でだしをとる時に煮干しやかつお節を合わせることが多いと思いますが、これらにはイノシン酸がたっぷり含まれているので、美味しいだしができあがります。

アルギン酸
主に含まれる海藻:こんぶ・わかめ・もずく
海藻に含まれる水溶性食物繊維の一つで、海藻のぬめり成分です。アルギン酸は体内でナトリウムを吸着して排泄されます。そのため、食塩の摂りすぎで起こる高血圧の予防・改善に有効です。
また、コレステロールを吸着して排出しコレステロールを下げる作用や、腸内に溜まった老廃物を
排出しおなかの調子を整える作用もあり、厚生労働省許可の特定保健用食品(トクホ)に指定されています。

フコイダン
主に含まれる海藻:こんぶ・わかめ・もずく
こちらもアルギン酸と同じく海藻に含まれる水溶性食物繊維です。フコイダンには血圧・血糖の上昇を抑える、コレステロールの排出を促すなどの生活習慣病予防効果に加え、がん細胞を死滅させたり、免疫系に働きかけてアレルギー症状を改善したりする効果も期待されています。加熱することでフコイダンが水分に溶けだし、体内に取り入れやすくなります。


海藻のお勧めの食べ方・取り入れ方

海藻の栄養を効率よく、また簡単に摂れる方法をご紹介します。

<お勧めの食べ方>
食事のはじめに食べる
海藻に含まれる食物繊維の働きにより、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。血糖値が気になる方は食事でご飯などの主食を食べる前に、海藻入りの汁物や副菜を最初に食べるようにしましょう。

油と一緒に食べる
海藻には皮膚や粘膜の健康を保つために必要なβ-カロテンが含まれています。β-カロテンは油に溶ける性質があるため、油と一緒に食べることで体内への吸収率がアップします。
例)炒め物にする、ノンオイルではないドレッシングをかけて食べる

酢と一緒に食べる
酢に含まれているクエン酸がカルシウムを体内に吸収されやすい形に変える働きがあり、効率的にカルシウムを摂取できます。
例)酢の物にする、酢入りのドレッシングをかける

水で戻す場合は短時間で行う
水溶性食物繊維が溶け出してしまうため、乾燥わかめやひじきを戻す際は長時間水に付けないようにしましょう。

<簡単な海藻の取り入れ方> 
海藻をとることに難しさを感じている方も、簡単に手軽にとれる方法がありますので、是非取り
入れてみてください。
そのまま手を加えずに食べる  
・海藻入りの惣菜を購入する
 例)刻み昆布の炒め物、きゅうりとわかめの酢の物、ひじきの煮物、海苔和え など
・汁物やサラダにトッピングする
 例)乾燥わかめ(水で戻して冷蔵庫に保管しておくと利用しやすいです)
   とろろ昆布、もずく、海藻ミックス など

アレンジして食べる
・めかぶやもずく酢をストックし、納豆や冷奴と合わせて
・ひじきやわかめをご飯と一緒に炊き込んで  
・青のりやひじきを卵焼きに入れて
・こんぶの煮物、ひじきの煮物をご飯に混ぜて