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栄養コラム

夏の飲み物を賢く選ぼう

No.261

2025年9月1日

管理栄養士 豊泉友加里

まだ暑さの残る9月は、引き続き熱中症や夏バテへの対策が重要です。中でも水分補給は健康管理の基本ですが、水分不足は夏バテの大きな原因になり、かつ何を飲むかによって体調への影響が大きく変わります。今回は、飲み物に含まれる糖質やエネルギーの違いに着目し、健康的な水分補給のコツをお伝えします。


なぜ水分が必要?代謝と水分の関係

体の約60%は水分でできています。排泄(尿・便)や汗などで、1日約2.5ℓの水分が失われます。水分は体内で血液循環・体温調節・栄養や老廃物の運搬などに欠かせず、代謝を維持する土台になります。

水分は単に喉の渇きを潤すだけでなく、体のさまざまな機能を助けています。
ここでは、水分摂取によって得られる主なメリットを紹介します。

血流を良くし、代謝アップ

水分が不足すると血液の粘性が高まり、流れが悪くなりがちです。十分に水分をとることで血流がスムーズになり、体内の栄養や酸素を全身に届けやすくなります。また、老廃物の排出が促され、代謝の向上や冷え、むくみ予防にもつながります。

胃腸の働きを助ける

水分は消化・吸収をサポートし、胃腸の動きがスムーズになり、消化機能が高まります。
そのため、水分が不足すると便秘や腸内環境の悪化を招く一因にも。十分な水分をとることで便通が整い、腸内環境を改善し、免疫力アップにも役立ちます。
ただし注意点として、食事中の過度な水分摂取は消化液を薄め、反対に消化を悪くする可能性もあります。また、あまりよく噛まずに水分と一緒に飲み込む等でも消化不良につながりやすくなるため、コップ1杯を目安に取り入れていきましょう。

疲労やストレスの軽減

水分不足などで血液の流れが悪くなると自律神経が乱れ、疲労やストレスを感じやすくなります。こまめな水分補給は自律神経を整え、心身のリフレッシュやストレス解消にも効果的です。特にぬるめのお茶や白湯などはリラックス効果もあり、おすすめです。

体温調節・熱中症予防

水分は汗や呼吸を通して体温を調整する大切な役割を担っています。
十分な水分があることで暑さに強くなり、熱中症予防にもつながります


「隠れ脱水」に注意

「隠れ脱水」とは、体重の1~2%の水分が失われた"脱水症になる一歩手前の状態"をいいます。
以下のような場面で起こりやすく注意が必要です。

・暑い日が続いたとき
・風邪や発熱、大きな怪我・手術のあと
・引っ越しや環境の変化で生活リズムが乱れたとき

食欲不振・便秘・頭痛・筋肉痛・だるさ などの症状が現れたらなるべく早く水分補給をしてください。脱水は体重の20%の水分を失うと命に関わる重篤な状況になるため、症状が出る前に意識して水分補給することが大切です。


水分補給の基本

水分は毎日の排泄や汗などで、1日約2.5ℓの水分が失われていますので、その分の水分を補う必要があります。

食事からの水分補給
1日の水分摂取は、飲み物だけでなく食事からも取り入れられています。3食から取り入れる水分は1ℓ程で、食事から取り入れる水分も体に必要な水分補給となります。

飲み物からの水分補給
食事から摂れる分を差し引くと、飲み物からは1.2~1.5ℓを目安に補うことが推奨されています。水分は1日約1.5ℓを目安に、1回でまとめてではなく数回に分けてこまめにとるようにしましょう。ポイントは「喉が渇く前に少しずつ」摂ることです。


水分補給のポイント

隠れた糖質やエネルギーに注意

甘い清涼飲料や加糖飲料は、知らないうちにお菓子やご飯と同じくらいの糖質やエネルギーを摂ってしまうこともあります。糖質が多い飲み物は、エネルギー過多、血糖値の急上昇や夏バテを助長する可能性もあります。また、甘い清涼飲料水やジュース類は糖分が多く、かえって喉が渇きやすくなるため、注意が必要です。

身近な飲み物について、100mlあたり(牛乳瓶半分程度)のエネルギーと糖質量を、砂糖に換算して表にまとめました。100mlでもかなりの砂糖量ですが、例えば500mlのペットボトルを飲むと、表の約5倍のエネルギーや糖質をとることになります。飲み物は無意識に多く摂ってしまいがちですので、選ぶ際にはエネルギーや糖質量を確認し、摂り過ぎに注意しましょう。

選ぶならこれがおすすめ

日常の水分補給は、なるべくエネルギーや・糖質がない飲み物を選ぶことをおすすめします。
まずは安心して飲める定番の飲み物を活用しましょう。

①水
水分補給の上ではシンプルな水が一番おすすめです。
水は温度による効果もあるため、気温や体温、体調に合わせて適宜取り入れていきましょう。
冷たい水は腸の刺激になるため、起床時に冷たい水を飲むと便通改善になります。反対に白湯など温かい水は内臓を温め、消化機能を高める効果も期待できます。

②ノンカフェインのお茶
コーヒーや紅茶、緑茶などにはカフェインが含まれており、利尿作用によって飲み過ぎが水分不足を招くことがあります。
また、個人差はあるものの、カフェインが中枢神経系を刺激して胃酸の分泌を促したり、心拍数を増加させたりすることもあるため、水分摂取を目的とする場合は、ノンカフェインの飲み物の方が望ましいです。カフェイン入りの飲み物は、1日2〜3杯程度にとどめましょう。

・麦茶
カリウムなどのミネラル分を含み、常温でも飲みやすいのが特徴です。また、近年の研究では、麦茶の香ばしい香り成分の「アルキルピラジン」が血流を促進する効果が見られ、動脈硬化の予防にも効果が期待されています。

・黒豆茶
香ばしい風味が特徴で、ポリフェノールやイソフラボンを含みます。
抗酸化作用やホルモンバランスのサポートが期待され、夜のリラックスタイムにも適しています。

・そば茶
ポリフェノールのルチンを含み、抗酸化作用や血流を整える働きがあるとされます。
香りが良く、温冷どちらでも飲みやすいお茶です。

・ごぼう茶
食物繊維やポリフェノールを含み、腸内環境を整えるサポートが期待できます。
香ばしさがあり、便秘が気になる方にもおすすめです。

・ルイボスティー
南アフリカ原産のハーブティーで、抗酸化作用をもつフラボノイドを含みます。ハーブティーの中ではクセが少なく飲みやすい種類です。

注意が必要な飲み物

一方で、水分補給としてはあまり適していない飲み物もあります。

・アルコール
アルコールは利尿作用が強く、体内の水分を失いやすいため、暑い季節に多く飲むと脱水の原因になります。暑い日は喉が渇いた後のビールが美味しいですが、水分補給としては逆効果です。飲むときは水やお茶を一緒に摂ることも心がけましょう。

・スポーツドリンク
スポーツドリンクには水分に加え、糖質やエネルギー、塩分やミネラルが多く含まれています。そのため、激しい運動や大量の発汗時には体の水分や電解質を補うのには有効ですが、日常的な水分補給としては糖質過多につながる恐れがあるため、運動時以外は控えめにしましょう。

アルコールやスポーツドリンクは、あくまで「嗜好品」として適量を意識することが大切です。毎日の飲み物を上手に選んで、健康につながる水分摂取を習慣にしていきましょう。


水分補給のおすすめのタイミング 

おすすめルーティーン

① 水や麦茶をマイボトルに入れて持参する
外出先でも手軽に水分補給できます。

② 寝室に水分を用意しておく
起床時や就寝前にスムーズに水分がとれます。

③ 食事の前後にコップ1杯の水を飲む
決まったタイミングに習慣づけると忘れにくくなります。
また、食事前に水分を一度取って一息入れることで食欲コントロールにも繋がります。

④ デスクやリビングなど目につく場所に水を置く
手の届きやすい場所に置くことで取り入れやすくなり、視界に入ることで「ちょっと飲もう」と思うきっかけになります。

いずれも脱水しやすい場面となりますので、喉が渇いていない状態でもコップ1杯分を目安に水分を補給しましょう。
また、冷たい飲み物ばかりは胃腸の働きを弱め、消化不良や夏バテの原因になることも。常温の水や麦茶、温かいお茶、スープなどをバランスよく取り入れるのがおすすめです。

普段、自分がどのくらい水分をとれているかは把握しにくいものです。
最近では、1日の水分摂取量を記録できるアプリもあるため、そうしたツールを活用するのもおすすめです。まずは、普段の水分摂取量を把握することから始めてみましょう。


おすすめレシピ

まだ暑さが残る9月におすすめの一品です。手順も簡単で手軽に作れる上に、冷やしておけば副菜やちょっとした1品にもなります。出汁の風味と軽やかな口当たりで、食欲が落ちているときでもさっぱりいただけます。ゼラチンベースのゼリーは、出汁と野菜の水分を閉じ込め、水分補給を兼ねた残暑のスタミナ維持にも役立つ一皿です。

夏野菜のゼリー寄せ

【材料(1人分)】
・オクラ      2~3本
・ミニトマト    4個
(ゼリー液)
・水          150 ml
・白だし        大さじ1(15g)
・ゼラチンパウダー   小さじ1弱(2.5g)

【作り方】
①オクラは沸騰したお湯で1~2分程茹でて、ヘタを切り落とし、薄切りにします。塩もみしてから茹でると、表面のうぶ毛がとれて口当たりよく、また色鮮やかになります。
(電子レンジの場合:耐熱皿にオクラを並べてラップをふんわりとかけ、電子レンジ600Wで1分30秒~2分加熱します。)
②ミニトマトはヘタをとり半分に切ります。
③水・白だし・ゼラチンパウダーを鍋に入れ、沸騰させないようにゆっくり温めながらゼラチンを溶かし、粗熱を取ります。
※さらに氷水などで冷やすと固まる時間が短くなるのでおすすめです
④お好みの容器に①②を並べ、③を流し入れて冷蔵庫で2時間以上冷やし固めて、完成です。

【ワンポイント】
・容器はグラスやタッパーなどお好みのもので可。
・カップに彩りよく野菜を層になるように並べると、見た目がより綺麗に仕上がります。

【アレンジポイント】
・枝豆やヤングコーンなどで手軽に彩りや食感もアクセントになります。
・海老やうずらの卵、スモークサーモンなどでたんぱく質をプラスするのもおすすめです。