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栄養コラム

きのこ

No.178

2018年10月1日

管理栄養士 板橋彩子

夏の暑さが和らぎ、秋らしい風を感じるようになってきました。
今回ご紹介する「きのこ」は、現在では栽培が盛んになり、スーパーなどの店先に1年中並べられるようになっていますが、旬は9-11月です。今がまさに食べ頃の秋の味覚を代表する食材です。


きのこについて

きのこは、日本ではいつごろから食べられていたのかはっきりしていません。しかし、奈良時代に書かれたとされている「万葉集」に、まつたけのことを詠ったといわれる歌があることから、奈良時代には食べられていたことが推測されます。しかし、当時まつたけは天上人だけが食べられる高級品で、庶民は今でもなじみのあるしいたけ、えのき、しめじ、まいたけ等を食べていたようです。そんな現在でも日常的によく食べられているきのこ5種類をご紹介します。

<しいたけ>
うま味成分が非常に豊富なので、ダシを取るのにも使われたりします。主なうま味成分は、グアニル酸とグルタミン酸で、乾燥させて干ししいたけにすることで、これらうま味成分が増します。


<しめじ>
「香りまつたけ、味しめじ」のしめじは「本しめじ」という種類ですが、一般的に手に入りやすいのは、人工栽培した「ぶなしめじ」という種類です。クセがなく様々な料理に合います。調理の際は、大きめにほぐすと食感を楽しんで食べることができます。


<えのきたけ>
くせが少なく、どんな食材とも合います。傘が小さく、枝が白くて細長いものが一般的ですが、茶褐色系の野生種もあります。えのきを水煮にして味をつけるとなめたけになります。


<まいたけ>
きのこが重なり合って舞っているように見えるところから、「舞茸」の名がついたという説があります。シャキシャキとした歯ごたえと独特の香りが特徴です。和洋中、様々な料理に合います。


<エリンギ>
軸が肉厚で、まつたけ、加熱したアワビに似た食感が特徴です。原産地はヨーロッパから中央アジアですが、日本では1990年代から栽培技術が普及し、家庭でもよく使われるようになりました。


きのこのメリット

きのこを食べるとどんなメリットがあるか、見ていきましょう。

1.腸の機能を改善
きのこは食物繊維が豊富です。もやし、きゃべつ、白菜等の野菜類と比較すると約2~3倍の量が含まれているので、きのこを食べることで、食物繊維不足を補うことができます。食物繊維には、水溶性と不溶性がありますが、きのこは特に不溶性の食物繊維が多く含まれ、不溶性の食物繊維は腸の動きを活発にしたり、水分量を適度に維持することで速やかな排便を促します。このように便が腸内に停滞するのを防ぐので、腸内で有害物質が作られるのを抑え、腸内環境を整える効果もあります。

【栄養成分(100g中)】
 
(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)

2.骨粗鬆症を予防
ビタミンDは、腸管からのカルシウム吸収を高め、血中カルシウム濃度を維持し、骨の形成と成長を促すことに関わる大切なビタミンです。魚類に最も多く含まれますが、きのこにもビタミンDが含まれているので、普段のメニューに追加することを意識してみましょう。
例えば、きのこのソテー(まいたけ、エリンギ、しいたけ)1皿で、1食分のビタミンD目安量を満たすことができます。他にも、例えば普段の野菜炒めに約1/3パックのまいたけを追加すると、1食分の8割を摂ることができます。ビタミンDを含む食材は限られていますので、小さな心がけで日頃から補うことが大切です。また、ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、炒め物に加えるなど油と合わせると効率良く摂取ができます。


※1食目安…18歳以上の男女(日本人の食事摂取基準(2015年版)より)

3.美味しく減塩できる
食べ物に含まれるうま味の成分として、グルタミン酸やイノシン酸、グアニル酸等がありますが、きのこに特に多いうま味成分はグアニル酸です。また、うま味は単独で使用するよりも、組み合わせて使用することでうま味が飛躍的に強くなることが知られており、「うま味の相乗効果」と呼ばれています。うま味の相乗効果を利用することで、薄い味付けで済むようになり、美味しく減塩ができます。グアニル酸は野菜類に多いグルタミン酸と合わせるとうま味が強くなることが分かっています。

グルタミン酸を含む食品
トマト、グリンピース、にんにく、白菜、アスパラガス、玉葱、ブロッコリー、チーズ、昆布、海苔、醤油、味噌、納豆 など

うま味の相乗効果


きのこの活用

1.料理のボリュームアップに
和・洋・中様々な料理に合うきのこは、炒め物、煮物、汁物等に追加して料理をボリュームアップさせるのに役立ちます。大きくカットすれば、よく噛んで食べることにつながり、満腹感にもつながります。また、きのこは低エネルギー食材なので、エネルギー摂り過ぎの心配も少ないので安心して嵩増しに活用できます

2.きのこだけで美味しい1品に
あと1品欲しいと思ったときは、きのこで1品作るのもおすすめです。うま味が多いので、きのこだけでも美味しい1品になります。網焼きソテー、マリネ、ナムル、煮びたし等、様々な料理に活用できます。ただ、きのこは油を吸収しやすいので、油を使うときは控えめにするよう気をつけましょう。

3.冷凍保存して普段使いに
鮮度が落ちやすく日持ちが難しいきのこは、冷凍保存すると酵素の働きによってうま味や香りが増しておいしく保存ができます。生の状態で保存ができるので、その日に使い切らない場合は、冷凍保存しておきましょう。石づきを切り落として、薄切りや小房に分けたりしておくと、すぐに使えて便利です。保存の目安は約1ヶ月です。それ以上は味や風味が落ちてしまいますので、なるべく早く使い切ましょう。


おすすめレシピ

きのこはうま味が多いので、うま味の相乗効果を使えば、美味しく減塩することができます。グアニル酸とグルタミン酸の組み合わせを利用し、塩は不使用で調味料の量を減らし、約50%減塩したレシピをご紹介します。

●きのこの減塩ソテー

【材料】(2人前)
・きのこ類  まいたけ…1袋(約100g)・ぶなしめじ…1袋(約100g)
・白菜…1枚半(80g)
・ミニトマト…10粒
・にんにく…1カケ(6g)
・油…大さじ1(12g)
・酒…大さじ2(30g)
・醤油…大さじ1/2(9g)
・みりん…小さじ1/2(3g)

グアニル酸食材:まいたけ、ぶなしめじ
グルタミン酸食材:白菜、ミニトマト、にんにく、醤油

【下準備】
①ミニトマト
1.ミニトマトは半分に切って、中の種を取り除きます。
2.耐熱皿にキッチンペーパーを敷いて、ミニトマトを切った面を上にして並べます。
3.ラップはしないで電子レンジで600w 5分を1~2回行い、水分を飛ばしてセミドライトマトにします。

②調味料
酒大さじ1、醤油、みりんは合わせておきます。

【作り方】
1.ぶなしめじの石づきを切り落とし、手で小房に分けます。
2.まいたけは食べやすい大きさに手で割きます。
3.にんにくは薄くスライス、白菜は1cm程度の幅に切ります。
4.火がついていない状態のフライパンに油を敷き、にんにくを入れます。
5.火をつけ、油ににんにくの香りが移ったらきのこ類を入れます。
6.酒(大さじ1)をふりかけ、蓋をして1分程度蒸し焼きにします。
7.きのこ類から水分が出てきたところで、蓋を取ります。
8.白菜、セミドライトマトを加え、強火にして水分を飛ばしながら炒めます。
9.水分が飛んだら、合わせておいた調味料を回し入れます。
10.調味料を全体に行き渡らせたら、出来上がりです。

※まいたけ・ぶなしめじ以外にも、しいたけやエリンギ等も使って、お好きなきのこ類の組み合わせで楽しめます。
※香りの良いごま油やオリーブオイルを使っても美味しいです。

【アレンジ】
・トースト
食パンに具を乗せ、チーズをかけてトースターで焼けば、食べ応えのあるトーストが出来ます。忙しい朝でも手軽に作れます。

・スープ
スープ皿に具と顆粒コンソメを少し入れて、お湯を注げば簡単にスープが完成です。にんにく入りなので食欲そそるコンソメスープになります。