ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

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栄養コラム

食材を無駄なく食べよう

No.175

2018年7月2日

管理栄養士 田口瑛里沙

食品ロス(フードロス)という言葉を聞いたことはありますか。食品ロスとは「まだ食べられるにもかかわらず廃棄されている食品」をいいます。食品ロスの問題は以前より世界的な問題としてあげられていますが、近年益々意識が高まっており、日本でも大型スーパーや飲食店、都道府県の自治体等で、食品ロス問題の解決に向けて取り組みを始めているところが増えています。今回は、個人が行える食品ロス対策をお伝えします。


<日本の食品ロス(フードロス)の現状>

日本の食品廃棄物は年間約2,842万トンあり、そのうちまだ食べられるのに捨ててしまう食品(食品ロス)は、約646万トンあるといわれています(※1)。これを国民1人あたりで考えると約51kgとなり、アメリカやヨーロッパなどの先進国の約95~115kgに比べると少ない方ではありますが、東南アジアなどの発展途上国の約11kgよりはかなり多い状況です(※2)。この国民1人あたりの年間食品ロスの約51kgは、ご飯に換算すると毎日「お茶碗1杯分(約139g)」が捨てられていることになります。また、この日本の食品ロス量は、国連世界食糧計画(WFP)が、途上国や災害被災地などへ送る食糧援助量(約320万トン)の2倍を上回る量にもなり、いかに多くの食料を無駄にしていることがわかります。

日本の食品ロスの内訳を見ると、飲食店などの事業所が約357万トン、残りが家庭で289万トンとなっており、家庭での食品ロスが意外にも約半数あります。私自身も気付いたら食材が腐っていて、捨ててしまうことも多いです。普段出している生ゴミをこの機会に振り返ってみましょう。

(※1)農林水産省及び環境省「平成27年度推計」より
(※2)国際連合食糧農業機関(FAO)「2011世界の食料ロスと食料廃棄」より


<家庭で最も多い食品ロスは“野菜”>

家庭の食品ロスは、食べ残しの他に、手つかずのそのまま捨てられていることも多く、ほとんどが賞味期限、消費期限が切れたものや、腐敗、カビの発生などで食べられなくなったものです。最も多く廃棄されるものは、傷みやすく日持ちしづらい「野菜」、次いで「果物」、「調理加工品」となっています。「野菜」の廃棄の中には、まだ食べられる芯や皮、余分に切り捨てられた部分なども多いようです。家庭においては、「野菜」の食品ロスを減らすことが大きなポイントになります。1人1人が対策をして、大きな削減を目指すことが重要です。


(農林水産省「食品ロス統計調査・世帯調査」(平成26年度)より)


<ゴミを出さないための対策>

(1)野菜を無駄なく使う

食べられるところも捨ててしまっていませんか。捨ててしまいがちな部分も使い方によっては食べることができ、料理に活用できるものもあります。無駄なく使う方法をご紹介します。

●皮ごと使う(にんじん、大根、じゃがいも など)
皮にも栄養があります。皮つきを用いると少し栄養が増え、例えばにんじんであれば、食物繊維やβ-カロテンが約1.2倍になります。皮をむいてしまっても、皮を他の食材と組み合わせて、かき揚げや炒め物、お好み焼きなどにするのも良いです。

●外側の葉や芯の活用(レタス、キャベツ、ブロッコリー など)
外側の葉や芯は硬めですが、料理に用いると食感が良くなったり、よく噛むことにもつながります。硬さが気になる場合は、細かく切って炒め物やスープ、お好み焼きなどに入れると良いでしょう。

●スープなどのだしとして活用(ねぎの青い上部分、とうもろこしの芯 など)
野菜に含まれる旨味を活用すると普段と一味違った料理になります。例えば、ねぎは火を通すと甘みがでます。また、とうもろこしも芯の部分には旨味が多いので、スープや鍋、炊き込みご飯のだしとして活用しましょう。

[※農薬について]
野菜の外側の部分や皮を使う際に、残留農薬が気になる方もいらっしゃると思います。日本では、残留農薬の基準が国で定められており、健康に害のない量なので、心配はないといわれています。農薬によっては、水洗いしたり、水に浸けておくと軽減するものもあります。また、炒めたり、揚げたりなど加熱することで農薬が少なくなるので、生より火を通して食べると良いかもしれません。
気になる方は、無農薬や有機野菜(JASマークがついている)ものを使用すると良いでしょう。

(2)捨ててしまう部分の栄養

つい捨ててしまう部分には、意外と栄養が豊富に含まれています。
例えば、大根の葉は緑黄色野菜に分類され、大根の根に比べると、たんぱく質は約5倍、カルシウムは約11倍、鉄は約31倍も多く含まれます。また、根には全く含まれないβ-カロテンが含まれます。葉つきで購入できたら、お浸しや炒め物、みそ汁に入れたりして、捨てずに上手に活用することをおすすめします。

(100g中)

 たんぱく質(g)β-カロテン当量(μg)カルシウム(mg)鉄(mg)
大根・葉2.239002603.1
大根・根0.40230.1


(食品標準成分表2015年版(七訂)追補2017年より)


<ゴミを作らないための対策「保存」>

少ししか使わなくても袋売りの複数入っているものしかなかったり、丸々1個の大きいサイズを買うなどで、余ってしまうことはありませんか。余ってしまった食材は、上手に保存して無駄なく活用していきましょう。

(1)冷凍保存

料理で使い切れなかった野菜は冷凍保存しましょう。特に今の時期は気温も高く野菜は傷みやすいので、すぐに使わないときは冷凍しておくと良いです。冷凍した野菜は、炒め物や煮物、スープ、ソースなどに活用しましょう。そのまま解凍したものは、水分が出て味も落ちやすいので、火を使った料理で活用することがおすすめです。2週間~1ヶ月間ほど保存することができます。

[野菜の冷凍保存方法]
下記①②で下処理したあとは、ジッパー付きの袋やラップ、冷凍用のタッパーなどに入れて、冷凍庫で保存してください。使うときは、凍ったまま調理しましょう。

①生のまま冷凍できる食品
キャベツ・・・ざく切りや千切りなど、使いやすい大きさに切って冷凍。
玉ねぎ・・・千切りやみじん切り、角切りなど様々なカットで保存すると使いやすい。
長ネギ・・・10cmくらいの長さに切って冷凍。使うときに必要な大きさに切る。
トマト・・・ヘタをとって8等分くらいに切って冷凍。スープやソースに活用すると良い。

②ゆでてから冷凍するのが良い食品
もやし・・・そのまま軽くさっとゆでて冷凍。
ごぼう・・・ささがきや乱切りなど様々な用途に使えるように切って冷凍。水で軽くアク抜きをすると
      褐変を防げる。
れんこん・・・薄くスライスし、酢水につけてアク抜きを。水分をふき取ってから冷凍。
オクラ・・・固めにゆでて冷凍。そのまま解凍して、お浸しなどの和え物にして活用。

(2)調味料などに浸けて保存

塩やぬか付けを使用し「漬物」にしたり、酢に漬けて「ピクルス」にしたりすると、生のままより日持ちします。また、煮物やナムルなど調理して作りおきしておくと、忙しいときでもすぐに食べられるので便利です。


<おすすめレシピ>

かぼちゃの種やわたまでまるごと使って、最低限の廃棄で済むレシピをご紹介します。炊飯器を使って手間なく作れます。

●まるごとかぼちゃケーキ

【材料】(炊飯器5合炊き用)
・かぼちゃ ・・・1/4個(約350~400g)
・ホットケーキミックス ・・・1袋(150g)
・バター ・・・20g(大さじ1杯半)
・卵 ・・・1個
・牛乳 ・・・2/3カップ(130cc)
・砂糖 ・・・30g(約大さじ3杯)
・塩 ・・・適量

【下処理】
1.かぼちゃは、種とわたを取り、さっと水洗いしておきます。
2.ボウルなどに水を溜め、水に浸けながら種とわたをそれぞれ分け、種はキッチンペーパーなどで水分
  をよくふき取り、わたは包丁で細かく切っておきます。
3.種は、オーブントースターで約3分焼きます。
4.3の種の外の殻を割り、中身を取り出したあと、軽く塩を振っておきます。

【作り方】
1.下処理したかぼちゃを濡れた状態のままラップに包んで、600wのレンジで約5分加熱します。
  ※竹串が軽く通る軟らかさまで加熱します。硬い場合は1分ずつ軟らかくなるまで加熱します。
2.1のかぼちゃをレンジから取り出し、横で1cm幅くらいのスライス切りにします。
3.2と下処理したわたをボウルに入れフォークやマッシャーなどで、かぼちゃを細かく潰します。
4.炊飯器に釜の下半分から底全体にバターを薄く塗り、残ったバターを耐熱容器に入れ、レンジで加熱
  して溶かします。
5.別のボウルにホットケーキミックス、牛乳、砂糖、卵、4で溶かしたバターを入れてよく混ぜた後、
  3の細かく潰したかぼちゃを加えてさらに混ぜます。
6.釜に5を流し入れた後、表面に種の中身をちらしたら蓋をしめ、白飯普通炊きのスイッチを押し
  ます。
7.炊き上がりの合図があったら釜から逆さにしてお皿に盛り、好きな大きさに切って完成です。

※もし中がまだ生の場合は、炊飯器へ戻し、再度普通炊きするか、フライパンで火を通してください。

【アレンジ】
・牛乳を豆乳に変えてもおいしくいただけます。
・甘さが控えめなので、はちみつやホイップクリームなどをかけて食べるのも良いです。
・くるみやアーモンドなどのナッツ類を砕いて入れるのもおすすめです。ナッツのまろやかな甘みと
 かぼちゃ本来の野菜の甘みがよく合い、またナッツの特長的な食感が加わったケーキになります。