ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

TEL. 03-3962-5100

栄養コラム

くるみ

No.153

2016年9月1日

田原 佳奈

アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類は外国産がほとんどですが、くるみは日本で生産できる
代表的なナッツです。長野県東御市はくるみの生産量日本一の街で、国道沿いには自生している
くるみの木が多くみられます。健康食として取り上げられることが多いナッツ類の中でも、
おすすめしたいくるみの魅力をご紹介します。

くるみ題名


くるみについて

くるみは、甲信越から東北までの山間部で生産されており、昼夜の気温差が大きく、涼しいところでよく
育ちます。9月後半から11月ごろまでが収穫時期となり旬を迎えます。くるみの歴史は長く、木の実を
主食としていた縄文時代の遺跡から見つかったり、10世紀ごろの平安時代にもくるみについての文献が
残っているほど、昔からよく食べられています。少量でも高カロリーで、たんぱく質、ビタミンB1、
ビタミンE、マグネシウムなど幅広い栄養を含むため、栄養補給源として活用されていた食材です。


くるみの料理

食感や風味が良く、味はコクや甘さがあり、そのまま食べるだけでなく、すったり砕いたりしてすり鉢お菓子や
食事など様々な料理に使われます。岩手県では美味しいものを食べた
ときに「くるみ味がする」と言われるくらい、くるみは美味しいものとして
昔から親しまれ、くるみの代表的な料理は様々な郷土料理に見られます。


くるみ和え・・・ごま和えのようにくるみをすって和え衣にし、菊や山菜などと和えた料理です。
くるみ雑煮・・・くるみを甘いペースト状にしたくるみだれに餅を入れたものや、岩手では一般的な
        だし汁の雑煮を作って、餅だけをくるみだれにつけて、だし汁の塩味と一緒に食べる
        ことでくるみだれの甘さが引き立つ食べ方もあります。
くるみ味噌・・・くるみを刻んで味噌に混ぜ、甘味を加えたくるみ味噌を五平餅
        しそで巻いて揚げた「しそ巻き」や、ご飯を潰して串に
        平らにつけてくるみ味噌を乗せて焼いた「五平餅」が
        あります。
くるみご飯・・・刻んだくるみを入れたご飯や、野菜などと一緒に炊き
        込んだ五目ご飯があります。
くるみ団子・・・刻んだくるみや、ペースト状のくるみ、また甘くしたくるみ餡を餅に混ぜて団子に
        します。岩手県のまめぶ汁では、くるみと黒糖を包んで団子にした餅を、にんじん
        などの野菜、豆腐、油揚げなどと煮込まれています。
くるみそば・・・くるみをすってめんつゆに混ぜて食べます。


くるみの脂質

ナッツ類は脂質が多く、くるみにも約70%の脂質が含まれています。脂質が多いと敬遠されがち
ですが、くるみには体に良い働きがある脂質が豊富に含まれるのでおすすめです。

○不飽和脂肪酸が豊富

「脂質」は脂質を構成している「脂肪酸」によって大きく2種類に分けられます。
 ・飽和脂肪酸(肉、乳製品に多い)不飽和脂肪酸
 ・不飽和脂肪酸(ナッツ類、魚、植物油に多い)

どちらも過剰摂取はよくないですが、特に飽和脂肪酸の過剰は中性脂肪やコレステロールが過剰となり、
生活習慣病や動脈硬化などに繋がるなど、体に大きな問題となります。反対に不飽和脂肪酸は
コレステロールを減らす作用や血栓防止作用などがあり、しっかり摂取したい脂肪酸です。
ところが、現代の日本人の食傾向では不飽和脂肪酸が少なく、飽和脂肪酸が過剰傾向にあります。
そこで活用したいのがくるみの脂質で、くるみの脂質はほとんどが「不飽和脂肪酸」です。例えば間食で
飽和脂肪酸が多くなりがちなお菓子と比べると、脂質の量は同じでも質はくるみの方が良いことが
わかります。

 脂質(g)飽和脂肪酸(g)不飽和脂肪酸(g)
くるみ 3~4個(約20g)13.81.412.1
クッキー 2枚(約50g)13.86.25.2

(日本食品標準成分表2015より) 

くるみ脂肪酸

○α-リノレン酸が豊富

不飽和脂肪酸の中でも特に注目したいのがα-リノレン酸です。α-リノレン酸とは、不飽和脂肪酸の
中でも魚の脂としてよく知られている「EPA」「DHA」と同じ脂肪酸のグループで、働きも魚の脂
同様に、血管の柔軟性を高めたり、血中脂質を改善し、血栓がつくられるのを防ぎ、動脈硬化や
心臓血管系疾患の予防に有効な脂です。ただ、EPAやDHAはα-リノレン酸を原料に体内でつくる
ことができますが、α-リノレン酸そのものは体内でつくることができないため、必ず食事で
とらなければならない脂質「必須脂肪酸」の一つです。

【ナッツ類のα-リノレン酸量の比較】
同じナッツ類でα-リノレン酸含有量を比べると、くるみにはだんとつに多く含まれており、
ピスタチオの45倍、カシューナッツの約120倍、アーモンドでは900倍にもなります。

(食品100g中)           

 α-リノレン酸(mg)
くるみ・いり9000
アーモンド・いり・無塩10
カシューナッツ・フライ味付け76
ピスタチオ・いり味付け200

(日本食品標準成分表2015より)         

リノレン酸

【くるみからα-リノレン酸を摂るメリット】
α-リノレン酸を含む不飽和脂肪酸は、非常に酸化されやすく、また、酸化された脂質は体への良い働き
が失われてしまうのが難点ですが、くるみには酸化を防ぐ抗酸化成分であるポリフェノールやビタミンE
が豊富に含まれ、α-リノレン酸の酸化を防いでいることも特長です。
さらにくるみのα-リノレン酸の酸化を防ぐためには、殻のついたものを使用したり、使用する直前に
砕くようにしましょう、また加熱による酸化を防ぐために、使用直前にローストして、なるべく早めに
使い切りましょう。他にも抗酸化作用のあるビタミンのβカロテン、ビタミンCなどが多い緑黄色野菜や
果物と一緒にとることもおすすめです。


目安量

くるみは脂質量が多いので摂り過ぎには注意が必要です。他の脂質とのバランスもありますが、
α-リノレン酸を摂るための1日目安量は3~4個(20g)程度です。魚の脂のEPA・DHAと同じ脂肪酸の
グループですので、魚料理を摂る場合は控えめにしましょう。
また、このくるみには油大さじ1杯強(13.8g)の脂質が含まれ、1食あたりの脂質量目安と比べると
男性は7割、女性は8割分に相当します。くるみを食べたらその分、脂質の多い肉料理や揚げ物、
炒め物メニューや間食を調整するようにしましょう。

【くるみ3~4個(20g)の脂質量に相当するメニュー】
唐揚げ・・・2個クルミ目安量5
ハンバーグ・・・1/2個
チャーハン・・・3/4皿
焼肉カルビ・・・2枚
かき揚げ・・・3/4個


おすすめレシピ

これから旬となるさといもと一緒にくるみの食感を生かした簡単おつまみをご紹介します。芋類には
抗酸化作用のあるビタミンCが多く含まれており、そのうえ芋に含まれるビタミンCは調理による損失が
少ないので料理に活用したい食材です。くるみの抗酸化成分に加え、ビタミンCを合わせてとることで
さらに不飽和脂肪酸の酸化を防いだメニューになります。

●さといもとくるみの包み揚げ

【材料】(16個分)レシピ
・さといも・・・大1個(100g)
・くるみ・・・3~4個(20g)
・とろけるチーズ・・・1枚
・味噌・・・小さじ1(6g)
・砂糖・・・小さじ1(6g)
・醤油・・・小さじ1/2(3g)
・みりん・・・小さじ1(6g)
・酒・・・小さじ1(6g)
・豆板醤・・・小さじ1/2(3g)
・しゅうまいの皮・・・16枚(約7×7cm)

【作り方】
1.くるみは殻を割り、フライパンで煎ってから、包丁で細かく刻みます。チーズは1/16等分します。
2.さといもは洗って皮つきのままラップに包み、600wで1分加熱し、ひっくり返してさらに
  1分加熱します。竹串がスムーズに入れば完了です。
3.さといもの皮をむき、つぶします。
4.調味料全てと1.のくるみと混ぜ合わせ、それを3.に加えて混ぜ合わせます。
5.4.を16等分にざっと分け、しゅうまいの皮にのせ、チーズを真ん中に入れ、三角形にたたみます。
6.170℃で皮が色づく程度にさっと揚げます。
7.油をきって器に盛り付けて完成です。

※豆板醤は七味唐辛子で代用しても良いアクセントになります。
※さといも以外に他の芋でもアレンジできます。
 例えば、じゃがいもなら衣をパン粉にしてコロッケ風のおかずにしたり、
 さつまいもなら甘味を活かしくるみとチーズでスイーツ風にしても美味しいです。