ヘルスケアトータルソリューションズ株式会社

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栄養コラム

おでん

No.65

2009年1月5日

管理栄養士 奥田 志おり

毎朝、布団から出るのが辛い寒さがまだしばらく続きますね。そんな季節にはあったか“おでん”が恋しくなります。家庭ではもちろんのこと、おでん専門店や屋台、コンビニでも気軽に味わえるのもうれしい限りです。とても身近な料理ではありますが、日々進化し続けており、まったく目が離せません。
今回は“おでん”の魅力を余すところなくご紹介します。
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おでんは最古のファーストフード!?

おでんの歴史は古く、発祥は室町時代の串に刺した豆腐の田楽でした。江戸時代になると寿司、天ぷらなどと同様に屋台が増え始め、江戸後期には醤油で煮込むようになり、明治になって汁気たっぷりの“おでん”になったそうです。そもそも「田楽」という名前の由来は芸能の田楽(田植えのときに田の神を祀るために田の畦で歌い舞った)が起源という説があります。串に刺した豆腐の姿が、高足(竹馬のような棒)に乗って舞う田楽法師に似ていたためです。
さらに“田楽”が“おでん”と呼ばれるようになった由来は、その昔宮中に仕えた女官たちが隠語として田楽のことを「おでん(おでんがくの略)」と呼んでいたのが町家の女性たちにも広dengakuまっていったそうです。


日本の心!おでん

「おでんの具は何が一番好きですか?」「だしは関東風、関西風それとも八丁味噌、どれがお好みですか?」と聞かれたのがきっかけで“おでん談議”に花が咲いたなんて経験があるのではないでしょうか。
好きなおでんの具やだしの好みで、その人の出身地がわかってしまう程、おでんは郷土色豊かです。その土地ならではの代表的な“おでんダネ”と“だし”をいくつかご紹介します。

『ご当地おでんダネ』
●北海道  ホッキ貝、ホタテ、ツブ貝 hotate
  さすが北海道、おでんダネにも海の幸が定番のようです。
●関東(主に東京) ちくわぶ、はんぺん
  小麦のたんぱく質(グルテン)をちくわ状に固めたちくわぶは、関東独特のタネです。
●中部(静岡) 黒はんぺん
  イワシやサバなど青魚のすり身から作られ、半月型のはんぺんは静岡 に特有のものだそうです。
●関西(京都) 生湯葉、みずな
  同じ関西でも大阪とは違い、豆腐や湯葉、京野菜が好まれるようです。
●関西(大阪) 牛すじ、タコ
  たこ焼きが名物の大阪だけあって、おでんにもタコは欠かせないようです。
●瀬戸内 じゃこ天
  近くの港で揚がった小魚を使った練り物が使われています。
●九州 餃子巻き
  餃子をすり身で包んで揚げたものです。博多の屋台ではわりと一般的のようです。

『おでんだし』katuobusi
●関東
  カツオと昆布だしが基本。色は濃いですが見た目ほど辛くないのが特徴。
konnbu●関西
  昆布が効いたカツオだしに、薄口しょうゆを使用。見た目以上に味は濃いめ。
●名古屋
  味噌味で基本のだしは牛すじだし。miso1


おでんに“からし”は定番ではない!?

“おでんダネ”や“だし”に地域によるさまざまな特徴があることは何となくわかっていた方は多いかと思いますが、おでんの“食べ方”にまで地域による違いがあるということはご存知でしたか?
一般的なのは、やはり辛子を付ける食べ方のようですが、味噌だれを付けて食べる地域も意外に多いようです。例えば北海道は“味噌だれ”、東北地方では柚子味噌生姜味噌を、愛知県では八丁味噌を付けます。静岡では粉節に青海苔をかけて食べるという独自のスタイルが定着しているようです。


おでんの栄養価

おでんはけっして華やかな料理ではありませんが、その栄養価は驚くほどに高いのです。
では、具体的にどの、おでんダネにどんな栄養が含まれているのか見ていきましょう。

●つみれ、はんぺん、さつま揚げ、ちくわ等の魚肉練り製品aji1
これらは、たんぱく質源です。同じ動物性たんぱく質でも豚・牛・鶏など畜肉にiwashi4比べて、脂の質が優れています。とりわけイワシやアジ、サバなど青魚から作られている練り製品にはEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。これらは血中の中性脂肪の低下、不整脈の発生防止、血栓の予防など様々な生活習慣病の予防効果があります。

●がんも、生揚
これら大豆製品には大豆イソフラボンやカルシウムが豊富ですので女性の更年期の諸症状緩和や健康な骨作りにはおすすめ食材です。

●昆布、こんにゃく、大根
これらのおでんダネは食物繊維が豊富です。また、おでんダネの中でも極めて低カロリ―ですのでダイエット中の方には特におすすめです。konnbu1daikonkonnyaku

●卵、練り物全般、がんもなどの大豆製品 
おでんダネ全てのような顔ぶれですが、まさに、おでんを一人前食べるだけでgoboumakiegg
1日に必要な量の約1/4の鉄が簡単に摂れてしまいます。

●じゃがいも
potato1おでんダネの中では珍しく、ビタミンCが豊富な食材です。また、いも類のビタミンCは熱に強いため、おでんのじゃがいもでビタミンCの摂取が期待できます。

おでんの素晴らしい栄養価、おわかりいただけましたでしょうか。しかし残念ながらおでんダネも完璧とは言い切れません。唯一の弱点は「ビタミンA」が不足しがちなことです。ご家庭で召し上がる際には、ほうれん草や小松菜、水菜など青菜を加えていただくと良いでしょう。chingen1houren1


コンビニおでんは現代人の救世主!?

“おでん”は店内で提供されるホットメニューの中で「和食」且つ「煮物」である唯一の商品、すなわちヘルシー料理なのでメタボでお悩みの方や、忙しくて自炊できない方には特にオススメです。コンビニおでんで栄養バランス抜群の組み合わせをご紹介しますので是非参考になさってみてください。

【コンビニで購入するもの】
つみれ、はんぺん、たまご、がんも、じゃが芋、昆布、大根
※ 量はすべて1個です(コンビニおでん全部で600円くらいです)

【ご家庭にあるものを利用していただくもの】
houren1ご飯 茶わん1杯(150g)gohan1konnyaku
こんにゃく(1/5~1/4袋分)
生わかめ一つかみ(20gくらい)
茹でたほうれん草小鉢1杯分(80gくらい)
※生わかめがなければ乾燥わかめでも結構です。その場合、量は1.5g程度です。

小鍋に、コンビニのおでんを汁ごと移し、こんにゃくも加えて温めます。
沸騰したらわかめを加え、最後にあらかじめ茹でておいたほうれん草も加えて出来上がり。

このたった1食で成人に1日に必要なビタミン、ミネラル、食物繊維が1/3から半分も摂ることができます。特にカルシウム、鉄、食物繊維が不足がちな現代人にとってはありがたいですよね。
(ちなみにエネルギーは全部で640kcal)


おでんの美味しさのカギは“順番”

完璧なだし、選りすぐりのおでんネタを揃えれば美味しいおでんが出来たも同然!なんて一筋縄ではいかないのが“おでん”です。おでんが美味しくなるかどうかのカギは“煮込む順番”にあります。順序としては味の染みにくい素材、例えば大根、こんにゃく、たまご、芋類など下ごしらえしたものを先に入れ、これらに十分味が付いてから、だしの出る練り物類を入れ、最後に豆腐やはんぺん等だしの味を吸い取るものを入れましょう。


おでんのレシピ

大きなお鍋でたっぷり作るのが美味しいおでんですが、次の日の昼も夜もなどと、おでんが続くとさすがに飽きてきてしまいます。そこで、一工夫して最後まで美味しくいただけるアレンジをご紹介します。

●オデン・イタリアーナ●
ホールトマト缶を加えるだけで、イタリアンに早変わり!おでん専門店では“トマト”を売りにしている所もあるくらいですから“おでん”と“トマト”が合わないわけがありません。トマトが加わることでビタミンAもしっかり補給できますので一石二鳥です。kincyaku

【材料】2~3人分daikon
・おでん2~3人分konnbu1
・トマトホール缶 1個tomato1

【作り方】
① 鍋のおでんに、トマトホールも加え火にかけます。(トマトは手でつぶしながら
  加えてください)煮立ったら出来上がりです。

※お好みで粉チーズをかけていただいても美味しいです。また、ごはんを加えますと
 リゾットとしても楽しめます。