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栄養コラム

牛肉

No.274

2026年10月1日

管理栄養士 渡邉美紅

牛肉は、日常を少し贅沢に特別な日の食卓を彩るごちそうから、明日への活力をチャージするスタミナ源と、広く愛され続ける食材です。一口食べれば広がる濃厚な旨味と、五感を刺激する贅沢な味わいには、多くの人を虜にする確かな理由があります。今回は牛肉の美味しさと栄養の魅力をお伝えします。


牛肉の歴史

日本には、弥生時代ごろにアジア大陸から朝鮮半島を経て牛が伝わったとされています。しかし、飛鳥時代以降は肉食を控える風潮が広まり、牛は主に農作業や運搬を担う大切な働き手として飼育されてきました。
牛肉を食べる文化が本格的に広がったのは、明治時代の文明開化以降です。明治維新を機に海外との交流が活発になると、西洋の食文化とともに肉食を取り入れる動きが広まりました。薄切りの牛肉をしょうゆや砂糖などで味付けして煮る「牛鍋」は人気を集め、現在のすき焼きへとつながっていきました。


焼いたときの香ばしい甘い香り「和牛香」 

特に和牛を加熱した場合に感じることができる独特の甘く芳醇な香りは「和牛香(わぎゅうこう)」と呼ばれます。約80℃(ステーキのミディアムやすき焼きなどの温度)で最も強く感じられ、さらに口に入れてしっかり噛むことで、鼻へと抜ける豊かな風味が楽しめます。
和牛香を最大限に引き出すための焼き方のコツは、「強火で一気に加熱せず、中火以下で脂の融点に合わせながら丁寧に熱を入れること」です。牛肉の香りを引き出すには「脂を美味しく温めること」にあります。

<和牛香を引き出す4つのステップ>

1. 焼く10〜30分前に「常温」に戻す
冷蔵庫から出したばかりの冷たい肉を焼くと、中心に火が通る前に表面が焦げてしまうため、肉の温度を均一にし、中心までムラなく火を入れやすくします。

2. サラダ油ではなく「牛脂」を使う
牛脂そのものに和牛香の成分がたっぷり含まれているため、肉にまとう香りが何倍にもふくらみます。

3. 火加減は「弱火〜中火」でじっくり
強火で焼くのは禁物です。フライパンを中火で温めて牛脂をなじませたら、肉を入れて弱火〜中火で丁寧に熱を入れます。

4. 焼き上がったらアルミホイルで「休ませる」 ※厚切り肉の場合
余熱で中心までじっくり火を入れることで、肉全体に和牛香と旨味がしっかりとどまります。焼き上がった肉をすぐに切ると、和牛香を含んだ大切な肉汁が流れ出てしまうので、火から下ろしたら、アルミホイルに包んで数分間休ませましょう。


栄養的特長

牛肉には、体づくりに欠かせないたんぱく質をはじめ、鉄、亜鉛、ビタミンB12など、
健康維持に役立つさまざまな栄養素が含まれています。牛肉は、鉄や亜鉛などのミネラルが他の肉類よりも約4倍豊富です。ミネラルは、汗と共に体の外にでていくので積極的にとりたい栄養素です。

鉄

牛肉には、鉄が多く含まれています。鉄不足は、貧血の原因になるほか日常的にだるさや疲労感、頭痛、息切れなどを感じることもあります。鉄をしっかり摂ることで慢性的な症状の解消につながります。
特に牛肉には、動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」が含まれています。ヘム鉄は、植物性食品に含まれる非ヘム鉄と比べて吸収されやすく、鉄不足が気になる方の食事には取り入れたい食材です。

出典:日本食品標準成分表(八訂増補)2023

亜鉛

亜鉛は、皮膚や骨の健康にかかわる大切な栄養素です。たんぱく質の合成や細胞の生まれ変わりにも関わっており、健康な体を維持するために欠かせません。
牛肉は、亜鉛を含む代表的な食品の一つです。もも肉や肩ロース肉は、ばら肉と
比較すると、約1.6~1.8倍多く含まれています。積極的に亜鉛を摂取したい場合は、部位を意識して食べるのも良いかもしれません。

出典:日本食品標準成分表(八訂増補)2023

ビタミンB12

ビタミンB12は、赤血球の形成や神経機能の維持などに関わる栄養素です。主に動物性食品に含まれています。比較的、肉には多く含まれていますが、牛、豚を使った場合で取れるビタミンB12量が異なります。ビタミンB12の1日の目安量は成人男女とも4.0μg、1食あたりにすると1.3μgです。
たとえば「肉とブロッコリーのオイスターソース炒め」を作る際、牛、豚それぞれ肩ロースを使った場合のビタミンB12は、豚で0.6μg、牛だと、1.4μgと2倍以上に増え、1食分の目安量を十分に摂ることができます。


※肉80gを使用した場合で算出
出典:日本食品標準成分表(八訂増補)2023


おすすめの活用方法

牛肉は、部位によって肉質や脂肪の量、食感、味わいが異なります。そのため、料理に
合った部位を選ぶことで、よりおいしく楽しむことができます。
以下に、主な部位ごとの特徴とおすすめの調理法をご紹介します。


おすすめレシピ

牛肉には、鉄や亜鉛などの栄養素が含まれています。
ブロッコリーやパプリカなど、ビタミンCを多く含む野菜と組み合わせることで、
鉄の吸収をサポートできます。彩りもよく、牛肉と野菜を一緒に
美味しく食べられる、手軽な一品です。

牛肉とブロッコリーのオイスターソース炒め
【材料(2人分)】
・牛肉薄切り……160g
・ブロッコリー……1/2個
・パプリカ……1/2個
・にんにく……1かけ
・片栗粉……小さじ1
・油……大さじ1/2  
・オイスターソース……大さじ1
・酒……大さじ1
・しょうゆ……小さじ1
・砂糖……小さじ1/2

【作り方】
1.ブロッコリーは、小房に分け、茎部分は皮をむいて食べやすい大きさに切ります。耐熱容器に入れ、水を振り、ふんわりとラップをかけて電子レンジで500W1~2分加熱します。
パプリカはくし切り、にんにくは薄切りにします。
2. 牛肉は冷蔵庫から出して常温に戻し、幅5cmほどの一口大に切り、片栗粉をまぶします。
3.  フライパンに油を熱し、にんにくを炒めます。香りが出たらブロッコリーとパプリカを
加えて炒めます。
4. 野菜を端に寄せ、牛肉を加えて炒めます。肉の色が変わったら全体を混ぜ合わせます。
5.オイスターソース、酒、しょうゆ、砂糖を加え、全体に味がなじむまで炒めたら完成です。

◎アレンジ
オイスターソースの代わりに、ポン酢+マヨネーズでも美味しく仕上がります。
ポン酢……大さじ1/2
マヨネーズ……大さじ1/2
また、砂糖と酢を煮詰めた甘酢ソースを絡めても、さっぱりとした味わいを楽しめます。
赤ワインを使うとさらにおいしさがグレードアップします。