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栄養コラム

ほうれん草

No.239

2023年11月1日

管理栄養士 板橋彩子

少しずつ肌寒い日が増えてきました。これからさらに寒さが増してくると、様々な冬の野菜が美味しくなります。今回はその中から、ほうれん草についてご紹介したいと思います。ほうれん草は通年流通していますが、11~3月の寒い時期が旬の野菜です。これからの時期、美味しく食べていただけるおすすめの野菜です。


ほうれん草について

ほうれん草には「東洋種」と「西洋種」があります。東洋種は葉の切れ込みが深く、ギザギザした形をしているのが特徴で、葉肉が薄く、アクが少ないという特徴があります。また、西洋種は、葉が丸くて厚みがあり、害虫に強いのが特徴です。現在は、この両方を掛け合わせて、それぞれの長所を合わせ持った「交配種」が主流となっています。その他、生食用に改良されたサラダほうれん草などもあります。

ほうれん草と言えば、日本では1959年から放送された人気アニメーション「ポパイ」に登場するほうれん草の缶詰を連想する人もいるかも知れません。ほうれん草の缶詰は、日本では見かけないため馴染みがありませんが、アメリカやヨーロッパでは一般的に売られている食品です。
味付けがされていなく、そのまま食べても味気ないため、グリーンカレーやパイ・キッシュの具など、料理の材料として使われているようです。


ほうれん草の特徴

代表的な緑黄色野菜

緑黄色野菜は、100g当たりのカロテン含量が600μg以上の野菜のことを指します。ほうれん草(通年・生)のカロテン含量は100g当たり4200μgで、葉の緑色が濃く見た目からも想像しやすいですが、代表的な緑黄色野菜に分類されています。
野菜の摂取量の目標は1日350gとされており、そのうち120gは緑黄色野菜を摂ることが推奨されています。しかし、日本人の野菜の平均摂取量は、目標とする量から約80g不足しておりそのうち半分の40gは緑黄色野菜です。例えば、ほうれん草のお浸しは1人前約80gなので、
1日の食事の中で1品追加してもらうことで、緑黄色野菜の不足分を補うことができ、さらに1日の野菜摂取量も満たすことができます。ほうれん草のお浸しは、作るのにそれほど手間がかかりませんし、お惣菜で売られていることも多いですので、野菜不足が気になる方は、ぜひ普段の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。            ※1 「健康日本21(第二次)」より
            ※2 令和元年国民健康・栄養調査参照

鉄が豊富

ほうれん草は野菜の中では鉄が豊富です。鉄は体には欠かせないミネラルの1つで、不足すると全身への酸素の供給が十分に行われず、鉄欠乏性の貧血を引き起こすことで良く知られています。特に女性は、平均摂取量が推奨量を満たせていないため、鉄不足を補うのにほうれん草は
おすすめの食材です。
鉄が豊富なイメージを持たれることが多いひじきの煮物とほうれん草のお浸しを比較すると、
ほうれん草のお浸しの方が2倍以上の鉄が含まれています。ほうれん草に含まれる鉄は非ヘム鉄と呼ばれる鉄で、ビタミンCによって吸収率がアップしますので、トマトやブロッコリー、パプリカなどビタミンCの多い野菜や果物と組み合わせて摂取することがお勧めです。          ※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出

収穫時期でビタミンC量が変わる

ほうれん草は、収穫時期によってビタミンCの含有量が変わることが複数の研究で認められています。下記グラフは、収穫時期によるビタミンC量の違いを示したものです。特に冬採りのほうれん草はビタミンCが豊富で、冬採りは夏採りの3倍、通年の1.7倍にもなります。冬のほうれん草は、栄養価が高いということだけでなく、甘味も増して美味しくなりますので、ぜひ旬の時期にたっぷり食べていただきたいです。           ※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より


冷凍ほうれん草の栄養

冷凍ほうれん草は、使いたい時に必要な分だけすぐに使えてとても便利です。普段からよく利用するという方も多いかも知れません。ところで、冷凍野菜の栄養価ついて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。冷凍すると栄養素が無くなっているのではないかと、心配される方がいらっしゃるかも知れませんが、冷凍野菜は、栄養価が最も高い旬の時期に収穫した野菜を使っています。
また、冷凍前にブランチングといって、90~100℃の熱湯につけたり蒸気に当てて、7~8割程度の加熱を行います。これにより、野菜の持つ酵素が不活化するため、変質や変色を防ぐことができます。また、冷凍による野菜組織の破損の予防にもなります。さらに、非常に低い温度で急速に凍結するため、これによっても組織の破損が抑えられ、栄養素が多く流れ出るのを予防しています。
下記は、冷凍ほうれん草と生のほうれん草の栄養比較です。処理の過程で、栄養素によっては減るものもありますが、無くなってしまうことはありません。中には増える栄養素もあり、冷凍による栄養素の損失を心配し過ぎる必要はないため、ぜひ冷凍ほうれん草も上手く活用していただきたいと思います。             ※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より


ほうれん草のアクについて

ほうれん草には、アクの成分であるシュウ酸が含まれています。シュウ酸はほうれん草以外の
野菜にも含まれていますが、下記表からも分かるように、ほうれん草は特にシュウ酸が多い野菜です。
          ※尿路結石症診療ガイドライン2013年版 参照

ほうれん草は、電子レンジや炒めて調理すると、食品中にシュウ酸が残り、酸味やえぐ味として感じられることがあります。また、シュウ酸の摂り過ぎは、尿管結石の原因になるとも言われています。シュウ酸は水に溶けやすく、お湯で茹でることで量を減らすことができますので、ほうれん草は茹でて食べるのがおすすめです。サラダほうれん草は、生食用に改良されておりアクが少ないため、生のまま食べることができます。


おすすめレシピ

<ほうれん草のクラムチャウダー>
ほうれん草をたっぷり使ったクラムチャウダーをご紹介します。ほうれん草は1人前約50g摂ることができますので、ほうれん草だけで1日の野菜不足分の半分を補うことができます。また、ほうれん草+あさりで鉄も補える1品です。旬のほうれん草の恵みを美味しくいただきながら、栄養バランスも整えましょう。

【材料・分量(3~4人分)】
・冷凍あさり:120g
・ほうれん草:1束(200g)
・じゃがいも:中1個(100g)
・たまねぎ:1/4個(50g)
・にんじん1/3本(50g)
・にんにく:1カケ(5-8g)
・バター:10g
・小麦粉:大さじ1(9g)
・調理酒:大さじ2(30ml) ※白ワインでも可
・水:150ml
・牛乳:200ml

【作り方】
1.ほうれん草は洗って、さっと茹でます(30秒~1分)。茹で終わったら流水で冷やし、水気を絞って約3cmの長さに切ります。
2.じゃがいも、たまねぎ、にんじんは1㎝角に切ります。にんにくは、すりおろしておきます。
3.フライパンにバターを溶かし、たまねぎを炒めます。たまねぎが透明になってきたら、すり
おろしにんにくを入れて全体を混ぜ合わせ、冷凍あさりを凍った状態のまま入れて炒めます。
4.じゃがいも、にんじんを加えて軽く炒めたら、小麦粉を入れます。小麦粉が全体に行き渡り、粉っぽさが無くなったら、調理酒と水を加えます。そのまま蓋をして弱火で6~7分煮ます。
5.スープに少しとろみがつきますので、牛乳を加えて蓋をせず、さらに弱火で2~3分ほど煮ます。
6.再びスープにとろみがついてきたら、1のほうれん草を加え、全体に行き渡るように混ぜます。ほうれん草が温まったら完成です。

【アレンジ】
・最後にチーズ(スライスチーズ1枚程度)を追加するとコクが出ます。お好みでお試しください。
・牛乳の代わりに豆乳を使うとあっさりしとした味わいになります。
・余った時は、パスタソースとしてアレンジするのもおすすめです。