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栄養コラム

そうめん

No.236

2023年8月1日

管理栄養士 渡邉美紅

日本の夏を代表するそうめん。全国各地にそうめんの産地があり、日本人にはとても馴染み深い食べ物です。特に、兵庫県の「播州そうめん」、奈良県の「三輪そうめん」、香川県の「小豆島そうめん」は日本三大そうめんと呼ばれています。食欲が落ちる暑い日でも、つるっと美味しく食べられ、また短時間で茹で上がるため、火を使う時間が短くて済み、この暑い時期には食べる機会が増えてくるのではないでしょうか。
今回は、夏の風物詩でもあるそうめんをご紹介します。


そうめんの歴史

そうめんは、奈良時代に中国から伝わったとされ「索餅(さくべい)」がそうめんの原型といわれています。索餅は、小麦粉と米粉をこねて細かく伸ばし、縄のように捻りあわせて揚げたお菓子です。「索餅」→「索麺」→「素麺」と呼び名が変化し定着しました。鎌倉時代に現在のそうめんの形に変わり、寺院で食べられ、江戸時代以降庶民の間でも食べられるようになりました。

<なぜ七夕にそうめんを食べるのか>

五節句の一つである七夕には、そうめんが行事食として食べられています。そうめんが食べられるようになった由来は、中国のある伝説に基づいているという説があります。中国の故事によると、7月7日に亡くなった子供の霊が熱病を流行らせました。そこで、生前好きだった索餅を
命日に供えて祭ったところ、病の流行が治まりました。このことから、7月7日に索餅を食べると1年間無病息災で過ごせるという言い伝えが広まったといわれています。


そうめんの特徴

そうめんの原料は、小麦粉、塩、水です。同じ原材料で「うどん」や「ひやむぎ」もありますが、そうめんは、「うどん」や「ひやむぎ」の作り方とは違い、よりをかけながら細く伸ばして作ることが特徴です。細く伸ばしていくために、麺が乾燥しないように油を塗りながら作ることもそうめんの特徴といえます。

<作り方の違い>

●そうめん…小麦粉を塩水で捏ねて生地を作り、油を塗りながら細く伸ばす
●ひやむぎ、うどん…平らな板と棒を使って生地を薄く伸ばし、刃物で切る
そうめんは麺の細さも特徴の1つといえますが、JAS規格(日本農林規格)では機械式製法と
手延べ製法で細さが定められています。
手延べ製法の場合は、1.7mm未満であれば、「そうめん」「ひやむぎ」の区別はありません。

そうめんの良さ

(1)夏バテの味方

暑い日は特に運動をしていなくてもエネルギーや体力が消耗されます。そのうえ、暑さなどで食欲が落ちるとさらにエネルギーが不足して、疲れやだるさがより悪化してしまいます。
エネルギー源には、たんぱく質、炭水化物、脂質がありますが、そうめんは炭水化物を豊富に含み、速やかにエネルギーを補給することができます。そうめんは、冷たくつるっとしていてのど越しが良いため、食欲が落ちている時も食べやすいことから手軽なエネルギー源として補うことができます。

(2)保存しやすく調理時間が短い

そうめんは、乾麺のため保存がしやすく、賞味期限もメーカーにより異なりますが、未開封なら約3年間は持つといわれています。長期保存させるためには保存方法が重要になります。開封前は、直射日光の当たらない風通しのよい冷暗所などに保管すると良いでしょう。そうめんは湿気に弱いため、床下収納や押し入れなどは保存場所としては適しません。
開封後は、密閉容器や密閉できる保存袋などにいれて保管して、なるべく早く食べきりましょう。また、そうめんは麺の太さが細いため、茹でる時間が5分以内と短く、素早く調理することができ、食べたいときにすぐに食べられる便利な食品です。

(3)アレンジ自由

そうめんは定番のめんつゆで食べる以外にも、つけ汁で味に変化をつけたり、調理方法を工夫
することで様々なアレンジが楽しめます。例えば、つけ汁を豆乳ベースのピリ辛風ごまダレにしたり、茹でたそうめんを野菜と合わせて一緒に炒めるとそうめんチャンプルーが作れます。
また、茹でたそうめんをフライパンで焼いて、かた焼きそば風にアレンジしたり春雨の変わりにそうめんを使って中華風サラダにもアレンジすることができます。


お勧めの組み合わせ

そうめんの栄養成分の中で多くを占めているのは炭水化物です。炭水化物を効率よくエネルギーに変えるために必要な栄養素と合わせて食べるようにしましょう。さらに、夏バテになる原因は、夏の強い紫外線の影響で体内に活性酸素が生まれ、酸化ストレスに体が対抗できないことが原因のひとつといわれています。そのため、抗酸化作用のある栄養素も欠かさずとることが重要です。また、炭水化物のみで食べるよりも食物繊維を含む食品と一緒に食べると、食後の血糖値の急上昇を抑えることができます。下記にお勧めの組み合わせを紹介します。

<夏バテ対策>

●ビタミンB₁を含む食品と組み合わせる
ビタミンB₁は、炭水化物を効率よくエネルギーに変える働きがあるため、不足すると疲れやすかったり、体がだるいといった症状がでることがあります。
ビタミンB₁は汗とともに排泄されやすいため、汗をかく夏に不足しやすい栄養素ともいえます。また、酸味成分のクエン酸も夏バテを予防する効果を期待できます。クエン酸は、エネルギーを作るための補助的な役割をしてくれるので、ビタミンB₁同様に摂りたい成分です。

●ビタミンCを含む食品と組み合わせる  
暑さによるストレスに対抗するには、抗酸化作用のあるビタミンCがおすすめです。
また、ビタミンCには疲労回復効果もあるため夏バテ予防にはとても重要な栄養素といえます。

●たんぱく質を含む食品と組み合わせる
暑さで食欲がなくなると、食事量の低下に伴いたんぱく質が不足しがちです。たんぱく質が不足すると疲れやすくなったり、免疫力が低下して夏風邪やさまざまな感染リスクを高める原因になりますので、そうめんと組み合わせて意識して摂取してもらいたい栄養素です。

<食後高血糖予防>

●食物繊維を含む食品と組み合わせる
食物繊維には、増粘作用があり水分を保持し、大腸の中で水分を吸収して膨らみ、腸の動きを活発にする働きがあります。食べ物の胃から腸までの移動をゆっくりするため、糖の消化吸収が緩やかになることで食後血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。


食べやすくするコツ

<そうめんを1口分ずつ盛り付ける>

そうめんは、数人分まとめて茹でることが多く、そのまま大皿に盛り付けて、時間が経つとくっついて食べにくくなることがあります。そこでその解決策として、そうめんが茹であがったら、手で1口分にまとめたり、フォークでパスタを巻くようにまとめたりしてから盛り付けると、小さいひと固まりになり食べやすくなります。また、そうめんの1人前は約100g(小さい束だと2束)、茹で上がりは約270gです。一口分(約30g)ずつまとめると、9個で1人前とわかりやすくなるので、食べ過ぎ防止にも繋がります。
※メーカーによって1束の重量は異なります。茹でる前に確認することをお勧めします。

<時間が経ってもくっつきにくくする>

【ポイント】
・たっぷりのお湯でゆでる
 お湯が少ないと、そうめんから溶け出すでんぷんにより、粘り気がでて麺どうしがくっつき
 やすくなります。
・よくもみ洗いをする
 よくもみ洗いしてぬめりをとることで、時間が経ってもくっつきにくくなります。

【茹で方】
1.そうめんを入れて再沸騰したら、蓋をして火を消します。
2.そのままの状態で、3~5分放置します。
3.氷水でしめて、流水させながら麺を5回ほどもみ洗いして、ぬめりを取ります。


おすすめレシピ

おすすめの組み合わせで紹介した中から、今回はビタミンB₁を多く含む食品を使用したレシピを紹介します。
<そうめんチャンプルー> 
【材料】(2人分~3人分)  
・そうめん:2束(100g) 
・ごま油:小さじ1
・豚肉:100g
・ピーマン:2個(70g) 
・玉ねぎ:1/2個(70g) 
・にんじん:1/2本(70g)
【調味料】
・顆粒和風だし:小さじ1
・3倍濃縮めんつゆ:小さじ2
・塩:少々
・こしょう:少々

【作り方】
1.そうめんを茹でます。(茹で方については、前術の「食べやすくするコツ」を参考に茹でてく
 ださい)
2.豚肉は一口大に切り、にんじん、ピーマンは千切り、玉ねぎは5mm幅に切ります。
3.フライパンにごま油を中火で熱し、豚肉を入れて炒めます。
4.豚肉の色が変わってきたら、玉ねぎ、にんじんを加え玉ねぎがしんなりするまで炒めます。
5.しんなりしてきたら、ピーマンを加えて中火で2分ほどさっと炒めます。
6.弱めの中火にして、そうめん、調味料を加え軽く混ぜ合わせて、塩、こしょうで味を整えて
 完成です。

【ポイント】
・顆粒和風だしとめんつゆは、あらかじめ混ぜ合わせておくとスムーズに調理できます。
・そうめんを入れてから加熱しすぎると、そうめんが切れたりくっついたりする原因になります
 ので、そうめんを加えたら手早く調理することがポイントです。
・茹でたそうめんが余った場合、保存袋にいれて冷凍保存することもできます。冷凍したそう
 めんは、解凍時に麺が柔らかくなりすぎるので、紹介したレシピのような温めて食べる料理が
 おすすめです。