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栄養コラム

牛乳

No.233

2023年5月1日

管理栄養士 渡邉美紅

牛乳を飲む習慣はありますか? 
牛乳には様々な栄養素がバランスよく含まれています。また、日常的に摂りやすい食品であることから、牛乳は「手軽に栄養素が摂れる」食品といえます。今回はそんな牛乳の良さをご紹介しますので、是非
積極的に取り入れ習慣的に飲んでいただきたいと思います。


牛乳の歴史

牛乳が広まるきっかけは幕末の開国です。開国によって外国人が住むようになると、牛乳の必要性が
高くなりました。そして、明治時代に「天皇が毎日2回ずつ牛乳を飲む」という記事が新聞や雑誌に載ったことで、本格的に国民の間で広がったとされています。
また、今のように学校給食で牛乳が飲まれるようになったのは、第二次世界大戦後、食糧不足の日本に
アメリカの民間団体から脱脂粉乳が供給されたのですが、この脱脂粉乳には子供の成長に必要な栄養素が多く含まれていることから、学校給食に出されるようになります。その後、1964年(昭和39年)には脱脂粉乳に変わって全国で牛乳が提供されるようになり、今では学校給食に欠かせないものとなっています。さらに、子供の学校給食だけでなく、病院での治療食や高齢者向けの施設(老人ホーム)の食事でも、牛乳は給食における重要な栄養源として定着しています。


牛乳の特長

牛乳は栄養価が高いということだけでなく、良いところがたくさんあります。牛乳の特長を見ていきましょう。

①カルシウムが摂れる 

牛乳にはカルシウムが豊富です。カルシウムは、骨や歯を形成するほか、血液凝固を促して出血を防いだり、筋肉の収縮などに関わっています。
牛乳と同様にカルシウムの多い食品「小松菜」「しらす」と比較すると、それぞれの食品の100gあたりのカルシウム量は、牛乳110mg、小松菜150mg、しらす190mgです。しかし、1食分あたりのカルシウム量を表すと、図1のように牛乳がだんとつで多くなります。牛乳は1回量が小松菜やしらすに比べて多いため、1食で多くのカルシウムを摂ることができるのです。この牛乳1杯分と同じカルシウム量を小松菜やしらすで摂ろうとすると、小松菜であれば約1袋分(150g)、しらすは約2カップ分 (120g)摂らなければなりません。              (八訂:日本食品標準成分表2020年度版 参照)

さらに牛乳がカルシウム源として優秀な点はカルシウムの吸収率です。食品別のカルシウム吸収率は、
図2で示す通り、牛乳が最も高いことが分かっています。なぜ牛乳のカルシウムの吸収率が高いのか
というと、消化において牛乳に含まれる乳糖や乳たんぱく質に含まれるカゼインを分解する過程で生成される「カゼインホスホペプチド(CPP)」にあります。このカゼインホスホペプチドがカルシウムの吸収率を高めています。
また、この機能は体への保健効果として科学的に証明され、体に影響を与える成分であることが認められるようになり、カゼインホスホペプチドを配合した食品は「カルシウムの吸収を高める」という特定保健用食品(*)の表示許可を取得しています。
(*)特定保健用食品とは、その保健効能成分の有効性や安全性、品質などの科学的根拠を総合的に判断したうえで
   消費者庁長官の許可を得て、特定の保健の用途に適する旨を表示できる食品です。   

      (上西一弘ほか、日本栄養・食料学会誌vol51 259-299 (1998) 参照)

②たんぱく質が摂れる

肉や魚、卵、豆腐などでたんぱく質が多く摂れることはよく知られていますが、実は牛乳からもたんぱく質を摂ることができます。牛乳1杯(200ml)あたりのたんぱく質量は6.6gで、卵1個(50g)、納豆1パック(50g)、豆腐1/2丁(150g)相当になります。時間がなくて簡単に食事を済ませたいときなど、パンやおにぎりに牛乳1杯をプラスすると、卵や納豆、豆腐を食べたのとほぼ同じ量のたんぱく質を摂ることができます。時間がないときでも手軽にたんぱく質が摂れる優れものです。
 

➂カリウムが豊富 

カリウムはナトリウムを体の外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂りすぎを調節するのに役立っています。カリウムは主に野菜に多いですが、牛乳にも多く含まれています。牛乳1杯(200ml)あたりのカリウムは300mgで、これは千切りキャベツ1袋分(150g)やミニトマト7個分(100g)、きゅうり1.5本分(150g)と同じ程度となります。牛乳からもカリウムを摂ることができるので、普段の食事に取り入れるとバランスの良い食事に近づけることができます。


おすすめの摂取のタイミング

①夏におすすめ:脱水症・熱中症対策として

気温があがり発汗量が増えて、体内の水分や塩分が失われると脱水症となり、さらに体温調節機能まで働かなくなると熱中症が引き起こされます。これらの対策の1つとして、こまめな水分補給と発汗で失われる塩分を含めたミネラル類(ナトリウム、カルシウム、カリウム等)を補える飲み物を補給することがよいとされています。牛乳には、水分とミネラル類が豊富に含まれていますので、まさに脱水症や熱中症
対策の最適な飲み物といえます。

②運動後におすすめ:筋肉の疲労回復 

運動後は様々な筋肉が傷ついているので、傷ついた筋肉の修復のためにできるだけ速やかにたんぱく質を摂ることが望ましいとされています。筋肉の疲労回復には、体内で合成することができない必須アミノ酸が必要で、とりわけBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)を含む食品を摂ることが有効です。牛乳のたんぱく質にはBCAAが含まれており、他にもBCAAを含む食まぐろ・鶏肉・卵などもありますが、運動後のタイミングで補給できるものとして考えると、牛乳は他の食品よりも消化吸収の負担が少なく、かつ速やかに補給することができます。
ぜひ運動後の補給として上手に活用していただきたいです。


おすすめレシピ

牛乳は味噌と相性がよく、また、牛乳のもつコクやうま味を活かして料理に加えることで美味しく減塩
することができます。
奈良県の郷土料理には、牛乳に鶏肉と大根や人参などのお好みの野菜を入れ、鶏がら、白味噌で煮込んだ「飛鳥鍋」というものがあり、牛乳と味噌を合わせる食べ方は古くから親しまれてきました。
今回はその牛乳と味噌を組み合わせた料理をご紹介します。牛乳の量もしっかり摂れる一品です。

●ミルクちゃんちゃん焼き
【用意するもの】
・アルミホイル30×30㎝

【材料】1人分
・生鮭         1切れ(80g)
・炒め物用カット野菜  1/2袋(75g)
・塩          少々
・こしょう       少々 
・牛乳         100cc
・味噌         小さじ2強(13g) 

【アルミホイルに塗る用】
・油          小さじ1/2(2g) 

【下準備】
・鮭
 鮭は塩・こしょうを少々振り、水分がでてきたらキッチンペーパーでふき取っておく
・調味料
 味噌と牛乳を合わせておく

【作り方】
1.フライパンの真ん中にアルミホイルをおく
2.アルミホイルに油をキッチンペーパーなどで塗り広げる
3.鮭をアルミホイルの真ん中におき、その周りにカット野菜をおく野菜はアルミホイル全体に広げるので
 はなく、鮭の周りを囲むようにのせる
4.アルミホイルは3を包むようにアルミホイルを立ち上げ、合わせておいた調味料を慎重にアルミホイル
 に流す
5.アルミホイルの上下を合わせ、端から巻くように包む
6.フライパンに少しだけ水(約大さじ2)を入れる
7.フライパンに蓋をして、中火で6分程度焼く
8.弱火にしてさらに4分程度焼いたら完成

【ポイント】
・下準備の味噌と牛乳を合わせる際は、牛乳を耐熱容器に入れ、電子レンジ600Wで30秒程度温めて
 から味噌を溶かすと混ざりやすいです。
・牛乳は加熱しすぎるとかたまりができてしまうので、鮭に火が通りづらい場合は弱火でじっくり火を
 入れてください。
・アルミホイルは両端までしっかり閉じてください。途中で牛乳がでてきてしまう恐れがあります。
・味が薄く感じる場合は、七味唐辛子やこしょうを足してみるとよいでしょう。

【こんな料理にも】
●味噌汁
だし汁の半分量を牛乳にして、味噌の量をいつもより少なくして作ってみるのはいかがでしょうか。
味噌を減らしても、牛乳のコクで味の薄さをカバーしてくれます。

●さばのミルク味噌煮
水の代わりに牛乳をいれると、少なめの味噌でも牛乳のコクで満足できます。
牛乳は、魚の臭みを消す効果もありますのでおいしくいただけます。
ふつふつとしてきたら中火~弱火で様子を見てください。
ゆっくり火を通すことがポイントです。