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栄養コラム

焼肉

No.220

2022年4月1日

管理栄養士 宮川豊花

4月は環境が変わり、新生活が始まる出会いの季節。
大勢での歓迎会はコロナ禍でなかなかできないかもしれませんが、せめて食事でお祝いをしようということで、ハレの食事が増える季節ではないでしょうか。
今回は、ハレの日の食事としても食べることが多い焼肉についてです。焼肉の良さと、食べ方の工夫をご紹介します。


焼肉の良さ

とっておきの日やお祝い、がんばったご褒美に焼肉を食べることは日本の食文化で重要な役割を担っています。家族や友達との団らんの機会が増えるなど、焼肉は人とのつながりに重要な食事ですよね。
各国各地で肉を焼いた料理というものは多くありますが、日本で焼肉が一般的になったのは、戦後です。
日本では明治時代に「肉食禁止令」が廃止されてから徐々に肉が食べられるようになり、戦後、肉を直火で焼く「焼肉」スタイルが大衆に広まっていきました。
焼肉には、美味しさ以外にも様々なメリットがあります。栄養価、調理法、咀嚼の3つの観点からご紹介します。

栄養価が高い

①たんぱく質が豊富 
たんぱく質は血液や筋肉、臓器、皮膚、骨、髪などを作っているほか、体の機能を調整するホルモン、酵素、抗体などの材料です。そのため、たんぱく質が不足すると、貧血や筋肉の減少、抵抗力の低下などがおこり、さまざまな病気にかかりやすくなります。現代社会では、多忙などの理由から、炭水化物に偏ってしまう方も多く、たんぱく質が不足してしまう方も少なくありません。
日本人の食事摂取基準(成人男性)では、1日のたんぱく質推奨量は65gと設定されており、1食あたりだと22gとなります。
これを基準にランチなどで食べる機会の多い料理を見てみると、意外にも推奨量に足りていないことがわかるかと思います。焼肉は、十分にたんぱく質が摂れる食事です。

また、たんぱく質の利用効率を測る指標にアミノ酸スコアというものがありますが、
焼肉のアミノ酸スコアは100点満点となっており、吸収利用されやすい質の良いたんぱく質であると言えます。さらに筋肉を作るアミノ酸BCAAも豊富に含まれているので、体づくりの成長期や筋肉を増やしたい方、また筋力が低下しやすい高齢の方には特におすすめです。

②鉄が豊富 
鉄は酸素を運ぶ赤血球の中のヘモグロビンを作る材料となり、ヒトの体には必要不可欠なものとなっており、飽食の現代でも、鉄は日本人に不足しやすい栄養素の一つです。
鉄が不足すると酸素を運ぶヘモグロビンが足りなくなるため、からだが重い、息がきれる、顔色が悪い、疲れやすいなどの症状が現れる鉄欠乏貧血という状態になります。
食品中に含まれる鉄は、動物性の「ヘム鉄」と、植物性の「非ヘム鉄」とに分けられ、肉に含まれる鉄は「ヘム鉄」です。ヘム鉄はたんぱく質と結合しているため、人体で使われる際にそのまま吸収し使うことができ、利用効率が高い鉄です。焼肉では、鉄の含有量の多いレバーや赤身肉を選ぶことで、より効率的に摂ることができます。

調理法で脂質・カロリーダウン

焼肉という調理法は、他の調理法と比較して、カロリーダウンに適した調理法なのはご存じでしょうか。
牛バラ(カルビ)1人前を網焼きで焼いた後と焼く前とのエネルギーの変化を比較しました。
網焼きで肉を焼くと脂が網の下に落ち、余分な脂質をカットすることができます。これは焼肉という調理法ならではの良さだと言えます。

咀嚼アップ

最新の研究調査では「肉などのたんぱく質を食べる高齢者ほど長生きする」ということが認められています。たんぱく質が多いことで、免疫力が高まること、筋力が衰えにくくなることに加え、ビタミンやミネラルを補給できることはもちろんですが、重要なカギとなるのが咀嚼です。肉は筋繊維がしっかりしているので、たくさん噛む必要があります。噛めば噛むほど、肉の旨味があふれてくるので、自然に咀嚼回数が増えます。
よく噛むと、脳に流れる血液の量が増えることで脳が活性化し、記憶力の向上や認知症の予防にも有益であると言われています。よく噛んで飲み込む機能を維持することは、フレイル(※)を予防することに大きな役割を果たしてくれるため、肉を食べる高齢の方は元気なのかもしれません。
※フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」のこと


ホルモンに注目! 

ライオンなどの野生の肉食動物は、獲物を倒したらまず肝臓や腸などの内臓から食べると言われていますが、内臓にはビタミンやミネラルなどの栄養が豊富で、肉食動物にとって重要な栄養源となっていることが理由の一つに考えられているようです。自然に備わった生きる知恵ですね。
焼肉では、様々な内臓肉(ホルモン)を手軽に食べることができます。
今回はその中でも、焼肉で馴染みの深い「タン」「レバー」「腸」について紹介します。

タン

タンは牛の舌の部分です。内臓の中でも高たんぱく質な部位で、たんぱく質が摂れることが特長です。
さらにレバー、ハツに次いで鉄が多い部位なので、レバーが苦手で鉄を補給したい方には特におすすめな部位です。

レバー

レバーは肝臓の部分で、内臓肉の中でもビタミンやミネラルの宝庫と呼ばれるほど、栄養的に大変すぐれています。
以下レバー1人前で摂れる栄養素の充足率を示します。
1人前のレバーだけで1日に必要な量が100%以上摂れる栄養素がこんなにも多いのは驚きますよね。
中でもレバーは日本人に不足しやすい鉄、亜鉛が豊富なことが注目点です。
鉄は【焼肉の良さ】でも触れましたが、血液を作るのに重要なミネラルです。女性は不足しやすいので、積極的に摂っていただきたいです。亜鉛は、体のあらゆる細胞の新陳代謝の要となる重要なミネラルです。

牛の腸は、部位によって分けて、マルチョウ、シマチョウと呼ばれています。

「マルチョウ」
マルチョウは小腸にあたります。カットするときに、丸い筒状のまま提供されることが多いためにマルチョウと呼ばれます。脂が多く、こってりとした部位ですが、エネルギーはカルビの半分程度です。

「シマチョウ」
シマチョウは大腸です。シマチョウと呼ばれる理由は、表面がシマシマ模様に見えることから来ています。マルチョウと比べると、脂は少なめで、厚みがあるため歯ごたえがしっかりしています。エネルギーはカルビの1/3程度と、かなりの低カロリーな部位となります。こってりした印象のある腸ですが、意外にもカロリーが低いんですね。コラーゲンたっぷりで女性にも人気があります。

これらの腸の部分は食感に特徴があります。歯ごたえのあるぷりぷりとした食感のおかげで、咀嚼回数も増えますので、お好きな方はぜひチョイスしましょう。


カロリーを摂りすぎないための工夫

メリットが多い焼肉を工夫して楽しく召し上がれるといいですね。
ただ、量は少し気にしましょう。焼肉を上手に食べるための工夫をご紹介します。

脂の多い肉ばかりにしない
 カルビや霜降り部位など脂身の多い肉は高カロリーです。
 これらばかりを食べるとかなりのカロリーになるので、脂が少ない部位、
 赤身や牛タン、ハラミ、ハツ、レバーなどの部位もチョイスしましょう。

よく噛んで味わって食べる
 よく噛むことで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐことができます。

焼き野菜やサンチュ、サラダを食べ合わせる
 野菜を付け合わせることで、お肉の食べ過ぎを防止します。

スープ、ご飯なども一緒に食べる
 肉以外の単品も合わせて摂り、お肉の量を減らしましょう。


おすすめレシピ 

おうち焼肉の付け合わせにおすすめのボリューム満点の低カロリー麺料理をご紹介します。
焼肉屋さんにも置いてほしい一品です。しらたきに含まれる水溶性食物繊維のグルコマンナンは、焼肉の余分な脂を吸着し、排出を助けてくれるので、焼肉と一緒のタイミングで食べるのがおすすめです。満足感が感じられ、食べ過ぎを防止できます。酢の酸味がお口をさっぱりさせてくれて焼肉にもぴったりです。
また、ダイエット中どうしても夜食が食べたくなってしまったときや、残業で夕食が遅くなったときにもおすすめです。

「ピビン冷麺風しらたき麺」

【材料】(1人分) 
・しらたき   1袋
・もやし    1/4袋
・キムチ    40g
・きゅうり   1/4本
<たれ>
 酢大さじ    3杯
 コチュジャン  大さじ1杯
 砂糖      大さじ1杯
 しょうゆ    小さじ1杯
 白だし     大さじ2杯
 水       40cc

【作り方】   
① たれの材料を混ぜ合わせ冷やしておく
② しらたきを茹でてあく抜きをし、食べやすくカットし、冷やしておく 
③ きゅうりは細切り、キムチは食べやすい大きさにカットし、
  もやしはレンジで火を通した後、すべて冷やしておく
④ ②のしらたきを①のたれにからめ、皿に盛り付ける
⑤ ④の上に、③のきゅうり、キムチ、もやしを盛り付ける
⑥ お好みで酢を追加してください

<アレンジ>

焼肉の付け合わせとして食べる以外にも、立派な一品料理として活躍します。

●焼いたお肉を添えて
 アツアツのお肉と冷たい麺がとてもよく合います。
 メイン料理の代わりにすることでカロリーを抑えられます。

●千切りにした梨やりんごを添えて
 韓国風に。シャキシャキとした食感と、さっぱりとした風味がよく合います。

●ゆで卵やサラダチキンを添えて
 低カロリーなので、残業で遅くなった日の夕食におすすめです。
 ゆで卵やサラダチキンを添えると、夕食としてしっかりたんぱく質も摂れる
 低カロリーな一品になります。