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栄養コラム

いぶりがっこ

No.208

2021年5月6日

管理栄養士 田中希歩

昨年2020年末、「日本食品標準成分表」の5年に一度の大きな改訂があったのをご存じですか。日本人の食生活の変化に合わせて情報が更新され、「調理済み食品の情報の充実」や「収載食品数の増加」などが行われました。今月のコラムでは「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に新たに収載された食品の一つ「いぶりがっこ」についてご紹介します。

いぶりがっことは

いぶりがっことは、干大根を燻(いぶ)して作る秋田名産の漬物のことで、「がっこ」は秋田県の方言で漬物を指します。冬の積雪が多く日照時間が短い秋田県では、漬物づくりに欠かせない「天日干し」を十分に行うことができず、昔から多くの家庭が家の中に吊るして干して作っていました。各家庭には囲炉裏があり、囲炉裏火の熱と煙によって大根が燻されてできたのが「いぶりがっこ」の始まりと言われています。囲炉裏火で燻製、乾燥することで風味と保存性が高まり、さらに燻製・乾燥を終えた大根を初冬の低温下で漬け込むことで、長い冬を越す保存食として活躍しました。
昭和に入り薪ストーブが普及し、家庭から囲炉裏が消えていくと同時に、家庭でいぶりがっこを作ることはぐんと減りましたが、現在は「焚き木干し」という手法で大根を燻製、乾燥させて製造され、商品として販売されています。

日本の伝統的な漬物

いぶりがっこの他にも、日本各地には伝統的な漬物がたくさんありますので一部ご紹介します。漬物は現代の私たちの食生活にも身近な食べ物ですが、食品の保存期間を長くしたり、野菜が取れない時期の保存食になるなど、人々の食事を豊かにするための昔からある知恵であると言えます。

・ぬか漬け
玄米を精米する際にでる米の外皮「ぬか」に塩、水などを混ぜたのが「ぬか床」でぬか床に野菜を漬け込んで作ります。過去の2015年11月のコラムで詳しくご紹介しています。

・福神漬け
大根、なす、うり、きゅうり、しょうが、なた豆(※1)、れんこん、しそ、たけのこ、しいたけなどの野菜を5種類以上使用した醤油漬けです。
※1さやが40~60cmまで成長するマメ科の植物のこと。

・松前漬け(北海道)
昆布と干したするめを細かく切ったものを、みりんと醤油で漬け込んだものです。

・わさび漬け(静岡県)
刻んだわさびの葉や茎、根を酒粕に漬けたものです。俳句の世界では4月の季語として用いられています。

・奈良漬け(奈良県)
うり、きゅうり、なすなどを酒粕に漬け込んだもので、酒粕の風味豊かな点が特徴です。

・しば漬け(京都)
なすやみょうが、赤しそなどを刻んで塩漬けにした漬物で、特徴的な赤色は赤しそから出ている色です。

燻製の特長

いぶりがっこは、同じ大根の漬物の一種である「たくあん」と見た目がとても似ていますが、最も大きな違いは製造工程に「燻り」があることです。近年“燻製ブーム”がひそかに起こっていますが、燻製にはどのような特長があるのかご紹介します。

①殺菌・防腐効果

そもそも燻製とは、木材を燃やして出した煙を当てて行いますが、その煙中には「ホルムアルデヒド」や「フェノール」といった殺菌・防菌作用がある成分が含まれており、それらが食品に浸透することで腐敗を防止してくれます。それと同時に、長時間の燻煙によって食品中の水分が徐々に減少することで、微生物の繁殖を防ぎ、保存性の向上に繋がっています。もともと燻製は傷みやすい食材を長期間保存可能な状態に加工するための技術なのです。

②香りづけ

香りのよい桜の木などをはじめとした木材を燃やすことで、食品にも香りがうつります。冷蔵技術の発展で食品の保存が容易になった現代では、燻製は保存食としてよりも、香りを楽しむものに変わっており、スモークチップの種類を選んで燻製を作ることもあるほどです。
いぶりがっこも燻製の香りがとても豊かで、たくあんとはまた違った旨味が感じられるのが大きな特徴ですよね。

おすすめレシピ

燻製の風味豊かないぶりがっこは、「クリームチーズ×いぶりがっこ」や「ポテトサラダ×いぶりがっこ」など、和食に限らず様々なアレンジができると評判ですが、もとは漬物。もちろんご飯との相性も抜群です。今回は普段の食事だけでなくお弁当にもピッタリなレシピをご紹介します。

【材料】  おにりぎ2個分
・ごはん         200g
・いぶりがっこ      50g
・大葉          5枚
・白いりごま       小さじ1杯
・醤油          適量(おにぎりの表面に塗る分) 
・クッキングシート 

【作り方】 
①いぶりがっこを5mm角ほどの大きさに粗みじん切りにし、
 大葉は縦半分に切って千切りにする
②ボウルに温かいご飯、①、白いりごまを入れ、よく混ぜる
③半分に分け、三角形に成形する
④よく熱したフライパンに適度な大きさに切ったクッキングシートを乗せ、③を焼く
⑤両面に少し焦げ目がつくまで焼き、表面に醤油を塗ってさらに少し焼く

【ポイント】
大葉、白ごまを加えて焼くことで香り豊かな焼きおにぎりになります。いぶりがっこに十分な塩味があるので、醤油は塗りすぎないようにしましょう。